池井戸さんミステリー挑戦
池井戸さんと言えば、やっぱり「半沢直樹」ですよね。何冊も楽しませてもらいましたし、沢山ドラマ化されてこっちも話題になったし、面白かったです。
お得意なジャンルっていうか舞台は、勤務経験のある「銀行」ですよね。それと銀行時代に見聞されたのだろう中小企業の盛衰ぶりを描いた本も多かったですね。
ところが、ところが、この本、そういうジャンルからは離れていて、なんとミステリーなのです。舞台は寒村です。これは意外。まぁこの本の最大に売りは、「池井戸潤、新境地に迫る」なのでしょう。
お話は
主人公は銀行マンでもなく、中小企業の親父でもありません。一作目に文学賞を取った(取ってしまった)主人公の三馬太郎ですが、その後はだんだんと尻すぼみ。辛いなぁ~。これって作家さんで良くあるパターン。まぁミュージシャンでも、芸人でも最初の一発目だけ当たって、その後は行くえ知れず、は有りますよね。
環境を変えようかと考えて、東京から田舎に移住します。この移住先が彼の今は亡き親父さんの故郷になります。でも、両親は彼が若い頃に離婚していて、彼は母親に引き取られていて、この地には幼少の薄っすらとした記憶がありますが、地域の方も親父さんの記憶はあっても彼の記憶はありません。
東京とは全く違った時間の流れ方や季節の移ろいを感じながらの生活の中で、今取り掛かっている連載も順調に進んでいました。少し余裕が出た頃に、居酒屋に誘われます。そこで出会った人達に消防団に誘われて、迷いますが、ある火災を目撃して消防団のみなさんの活躍ぶりを見て、入団を決意。のどかな田舎のハズだったのですが、連続放火と思われる事案が有ったり、なんと殺人事件まで発生してしまいます。
在住のみなさんは、しがらみの中で生きてきているので、あれこれ詮索することを止めているようにも思えますが、新入りの三輪太郎の方が「守らなくては」の意識が高いのです。
ってくらいが、ネタバレにならない範囲のあらすじになりますね。
ミステリーってどうなの?
私はミステリーは苦手です。読んでいて「こいつが犯人か」とか「これが伏線か」とそっちばっかりに気が行ってしまい、すごく疲れます。まぁこれがミステリーを読む楽しみなのでしょうが、それよりは少しは感情移入が出来るようなお話の方が楽ですね。
この本でも、所々に伏線らしき事象が散りばめられています。簡単に「こいつが犯人だろう」と思えるような行動だったり、描写だったりがあるのです。しかし、「そんな簡単な話では無いだろう」とも思えます。本は結構分厚くて474頁もあるのです。残りの分量を考えると、当然終盤にどんでん返しがあるでしょうしね。
不満もありました
お話は「あぁ~そう来るか」と「やっぱり~」って言う結末になるのですが、私にするとちょっと不満もありました。
その不満の1つが、この集落で起こる連続放火や殺人事件に関して、まぁ警察がほとんど登場しません。警察署長が登場するのですが、それも終盤だけ。関係者の取り調べのシーンも有りません。邪推ですが、警察を登場させると、お決まりの手順だったり、現場検証だったりトリックを登場させなくてはならなくなるのを嫌ったかな?と思えました。
それと、最後の最後に謎解きの意味で、独白があるのですが、これがいかにも説明的でして、散りばめておいた伏線のつじつま合わせをしているように感じました。
ドラマ化されてます
この本はドラマ化されていて、私はキャストと相関図を見ながら読んでました。その方が登場人物の顔が頭に残って「これって誰だっけ」がなくなりますからね。
主人公の三田太郎に中村倫也、ヒロインに川口春奈と人気の俳優さんが登場して、資料率も9.3%ほど行ったようです。全9話でスピンオフまで作って配信されています。