好きな作家さんと聞かれると一番に思い出すのは、「有川ひろ」さんです。図書館の蔵書を検索していてヒットしました。ただ、有川ひろさんだけが書いているのではなく、複数の作家さんの「女性が主人公」で「お仕事」の小説を集められています。それと、物理的な制約から「短編」に限ります。(当たり前)
本当はアカンのでしょうが、この短編集の意図も知りたかったので、巻末の「解説」も少しだけ先読みさせてもらいました。編者の三宅香帆さんが解説を書かれています。
今回の企画のコンセプトは「女性主人公を中心とした日本のお仕事小説」
労働という途方もない毎日の営みのなかに、わずかな余白を見つけそこに物語を見出した作家たちの軌跡を読みたいからである。
同じようなコンセプトで「僕たちの月曜日」なる短編集も発売されてまして、そっちは男性版のお仕事のお話の短編集だそうです。
読みたいのは、有川ひろさんの分だけなのですが、勿論、他の作家さんの分も読んでいます。
①「社畜」は山本文緒さん。
幼稚園からエスカレート式で進学して、コネ入社。30歳になって仕事で新しい役職が与えられて初めて周囲の冷たい視線を感じます。長年の友人にぼやくと学生時代のテニスに例えて、「あんたの取り柄って言えば、打たれた球を拾うことでしょう。全部拾っとけば攻撃しなくても、いつの間にか試合に勝つ。そして部長を押し付けられる」と言われます。
自分から攻めるって積極性はないけど、最後には勝つというのは、女性の仕事上での強みはこういう事だよ、と言っているようでもあるけど、それを自覚していればより強い、というお話かな。
②「美女山盛り」は田辺聖子さん。
デパートに納品している商社。仕事はからしきダメなんだけどニコっとしているだけで男性陣はデレデレ。しかし、彼女は想像以上に強かでした。
大阪の昭和の作家さんの田辺聖子さんから見たら、職場に美人が居れば仕事がスムーズに進むっていう男社会を笑っているのでしょうね。まぁ男ってこんなもんですよ。
③「こたつのUFO」綿矢りさ
若い作家さん。私にはちょっと理解し辛くて、後ろの解説を読みたくなりました。読んでも「はぁ~」くらいの反応でした。
④「茶色の小壜」恩田陸さん
交通事故に冷静に対応したのは会社の同僚でした。不思議な女性。彼女のロッカーを開いてみると、血液かと思える小壜。しかし、いくら不思議でも、そこまでするか?と思ったのですが、彼女は看護の会社を設立するという目標に邁進しています。
女性がここまで真っすぐに目標に向かっていると、こんなにも変に思われるのか?
恩田陸さんも好きな作家さんですが、やっぱり青春物の方がよろしいようです。
⑤「神様男」桐野夏生さん
アイドル志願の女の子達がギリギリまで自分を売り込もうとする世界で男が言います。「君たちは夢の奴隷なんだから、僕たち神様が解放してあげるんだよ」
男たちの身勝手な理屈に振り回される女の子。胸糞悪くなるお話。
⑥「おかきの袋のしごと」津村記久子さん
前任者が入院中に入社した彼女の仕事は、おかきの小袋に印刷する「一口メモ」。ある時、「遭難した時には」のメモを読んで助かったという夫婦が登場して注目を集めます。最初は乗り気でも無かった仕事なのですが、だんだんと仕事にのめりこんでいく主人公。しかし、前任者が復帰するらしい話を聞くと胸騒ぎ。
そしてトリを務めるのは、
⑦「ファイターパイロットの君」有川ひろさん。
有川さんお得意の自衛隊物です。男前な女性が登場します。なんと戦闘機乗りでしかもF15という新鋭機。しかも旦那もお子さんも居るのです。働く女性としては、危険と使命感の頂点にあるようなお仕事ですが、家に帰れば(彼女は単身赴任中)普通のママであり、奥さんなのです。それだけに、夫の実家などからの無言の圧力も有ります。スカッとした読後感が残ります。さすが有川さん。
ファイターパイロットの君は、「空の中」のスピンオフ作品だそうです。ずっと前に読んでいますが、また読みたくなりましたね。
それと、色々な作家さんに触れられて、「こんな人も読んでみたい」と幅が増える気がします。