「小説の大衆食堂」を自称されているらしいです。(wiki)泣かせるお話もあれば、歴史書もあります。人情噺は江戸っ子だからかお得意みたいですね。

 

この「鉄道員」は直木賞作でもあります。1997年4月に発行されています。映画化されていて、1999年に高倉健(健さん)主演で翌年のアカデミー賞をほぼ独占したそうです。(これもwiki)

 

 

wikiついでに

浅田次郎は、「散歩しているときに、あの(鉄道員の)ストーリー全部が一瞬にして頭の中に降って来た」と語っている。

たしかに短編ではありますが、すごいです。こういうのを才能とか言うのでしょうか。更にすごいのは、このお話を書くのに、現地の取材等は一切なかったと言います。まぁ多作な人だし、取材なんかしない方が自由に書けるっていえばそうなんかなぁ~。

 

 

 

  短編集です。

 

どれもファンタジーなお話だと思います。

 

〇鉄道員(ぽっぽや)

わずか二か月で我が子を亡くした鉄道員はもうすぐ廃線と定年。そんなある日に赤いランドセルを背負った少女が訪れてきます。ところが、そんな娘は居ないのです。彼女の正体は?

 

〇ラブレター

中国から風俗業に出稼ぎに来た女性の遺体引き取りをヤクザから命令されたのは、彼女と偽装結婚したポン引き。実はちょっと惚れてました。遺品を整理してみると、なんと彼女も惚れていたのです。

 

〇悪魔

これはミステリアス。不思議な家庭教師が登場します。

 

〇角筈にて

幼い頃に出ていった父親は事業にも家庭にも失敗しています。「サラリーマンになれよ」と言い残して、幼い彼はがんばって東大→一流商社と出世しますが、責任を取らされて左遷で南米に。その出発の日に父親に出会うのです。

 

〇伽羅

高級婦人服メーカーの営業マンと不思議なブティクの女店主のお話。

 

〇うらぼんえ

幼い頃に両親は離婚。祖父母に預けられて→薬剤師に。外科医を捕まえますが、浮気している主人。主人の実家の初盆で詰問されます。そこに祖父が登場してくれます。

 

〇ろくでなしサンタ

釈放された三太は、留置所にいた不器用なヤツが気になります。有り金はたいて、クリスマスプレゼントを買って、ヤツのアパートに。

 

〇オリヲン座からの招待状

冷え切った夫婦は東京で別居状態。出身は共に京都は西陣。子供の頃の遊び場だった映画館から閉館のお知らせと招待状が届きます。昔を思い出した夫婦に変化はあるんかな?

 

 

こうして短くあらすじを書こうとすると、主人公がちょっと参っている時に、故人などが助けに来てくれるっていうパターンが多いような気がしますね。

泣かせるには、こういう場面が最適なんでしょうか。

 

 

  鉄道員(ぽっぽや)に違和感

 

まぁこのお話は、この短編集の中でも一番の注目でしょうね。映画化されるハズです。泣かせるお話になっています。

 

しかし、この主人公、若い人から見たら、仕事一筋過ぎて、違和感あるでしょうね。なんせ、わずか生後二か月のわが子の容態が急変しているのに、駅で通常通りの鉄道業務をこなしています。そして、愛妻がなくなった時にも、やはり同じように業務をこなしてから、最終の列車で病院に向かったのですが、すでに遅かった。

 

ここまで、「男は仕事が第一」と言うかぁ~。そして、「鉄道って仕事は別物」という職業意識を高める必要あるかな~と思いますね。

 

しかし、そういう違和感もご承知なのでしょうね。文中に

危篤の報らせは何回もしたのに、乙松(主人公)は幌舞の駅の灯を落としてから、最後の上りでやって来たのだった。

電話をかけ続けたあげく、結局最期を看取ってしまった(同僚の)妻が今だに根に持つのも無理はない。

と同僚の妻の非難の声を入れてます。ちゃんとバランス取ったんだなぁ~。

 

 

それと、そもそもこの終点の駅です。必ず駅員さんが居る必要があるかな?とも思いました。終着駅です。来年には廃線になります。最盛期は石炭の積み出しや人口も多くて、便数も多かったでしょうが、今は一日3本だけになっているのです。最盛期だってどれほどの本数だったかな?

 

主人公は自分がどうしても駅に居なくちゃならない理由に

転轍機も回さなければならんし

と言います。これはいわゆる分岐器、ポイントとか呼ばれる線路の行先を分ける所です。しかし、単線で折り返し運転なら、こういう作業は不要です。

 

また、この主人公、少なくても子供が亡くなってしまった17年前から、ずっとこの幌舞の駅長(一人勤務ってことから想像すると)を勤めています。それと、この駅はまだJRなのです。第三セクターとかではありません。となると、JR北海道では、この間転勤が有りません。これも不思議な感じがしました。