大好きな作家さんです。映像化された作品も多いです。一番好きなのは、「県庁おもてなし課」ですね。舞台が有川さん出身地の高知県。作家さんの郷土愛を強く感じます。他にも、自衛隊シリーズとか図書館戦争シリーズと多彩。
この本は児童書の「だれもが知らない小さな国」(知ってる、と知らない、の違い)の作者さんと対談をされたのをきっかけに有川版のコロボックル話が出来たとかでして、有川さんの作品の中でも、ファンタジー色が強い作品だと思います。
主人公のヒコは、ミツバチを求めて全国を転々とする「はち屋」さんの子供です。自然が相手の仕事。ふとした事で驚くような体験をします。巣箱を置いている所から道路に向かっていると、「トマレ!」の声を聴きます。足を止めると大きなマムシが居たです。不思議な存在に守られたヒコ。その後も不思議な出来事は続きます。
ところが、不思議な現象をネタにしようとする輩も登場します。その時に、自然を相手に仕事をしているお父さんが、テレビ制作会社の人達に言います。
日本の八百万(やおよろず)の神様は、目に見えません。でも神様はいないと、勝手に決めつけることも出来ないでしょう。私の仕事は、自然の恩恵を受けて成り立っていますから、目に見えなくても、自然の中にいる神様への感謝は、大切にしています。
有川さんが児童書のお話を発展させて、有川さんの世界を拡げておられるんだなぁ~と思いました。この時点では、想像ですが、児童書の「だれも知らない小さな国」を読んでいるような子供がいる親世代に向けての解説本のような位置づけなんだろうかな?でした。
子供たちが成長している中で「誰かに見守られている」という瞬間があると思いました。そういう気持ちを強くしてくれる本。
しかし、やっぱり気になるのは、元になった「だれも知らない小さな国」の方ですね。有川版の方を読んでいると、絵本か児童書なんだろう~と想像していました。
森に小さなこびとさんがいて、偶然お友達になってしまう。そして、僕は秘密も守らないといけないし、時には彼らを守らなくてはならない、という使命感を抱かされるような本かな、とね。
ところが、ググってみると、本は200頁以上もあって、対象年齢は小学5・6年生になってました。絵本ではありませんでした。今の小学生に「こびと」って「そんなアホなぁ」と言われてしまうかな。でも、自分はその時代にベルヌの「月世界旅行」とか真剣に読んでたなぁ~と思い出しました。
それで、やっぱり図書館まで行って、元本も読ませてもらいました。元本の出版は昭和34年で、お話の舞台は戦時中になっています。子供の頃の体験をすこし成長してから実現するっていう点は、有川版でも受け継がれてました。そして、やっぱり自然に対する畏敬と尊敬の念。
元本の「だれも知らない小さな国」を子供の頃に読んだ人が、ちょっと大人になってから、有川版の「だれもが知っている小さな国」を読めば、「あぁ~あのエピソードはこういう意味だったのか」とか「あれは、こんな教訓を含んでいたのか」とか思うだろうなぁ~と思いました。
元本の方にも、様々な示唆を忍ばせて有りますが、やっぱりお父さんの「八百万の神様~」のお話はステキです。
出来る事なら、最初に元本の「だれも知らない小さな国」を読んでから、有川版の「だれもが知っている小さな国」を読むのが順序のように感じました。