米澤穂信氏は1978年の岐阜県出身だそうです。なので今年(2023年だと44歳くらいか)岐阜は戦国の武将とか入り乱れたところでもありますね。

 

 

 

  大河「軍師官兵衛」

 

とても面白く読ませてもらえました。私は、2014年のNHKの大河ドラマの「軍師菅兵衛」を見てました。当時はNHKの大河ドラマ毎週楽しみにしていたんです。今はなんだか疎遠になってきました。老化が進んで登場人物が多すぎるのを敬遠しているのかなぁ~。

 

登場人物で村重の正室(側室との説も有り)の「だし」(すごい名前ですね)が桐畑美鈴だったし、本当に情けない村重を演じていた田中哲司さんが思い出されました。こういう登場人物が多いなかでいくらかでも頭に描ける人がいると助かります。

 

この黒牢城の場面は、荒木村重が信長を裏切って、一向宗や毛利を頼りに有岡城に籠城したシーンがありました。当時秀吉の配下だった菅兵衛が説得に城におもむくのですが、投獄さえてしまいます。これって殺すより、温情な扱いに感じますが、当時だと戻ってこない菅兵衛が村重に寝返ったと判断されて、菅兵衛の人質だった息子君を殺してしまえ、という事だったようです。なので菅兵衛は自らを「殺せ」と叫びます。しかし、村重は思うところがあって(彼の性格だったり、ライバル心ですね)菅兵衛を生き長らえさせるのです。その期間がなんと一年半。

 

 

  歴史小説?推理小説?

 

舞台が戦国時代ですし、あの織田信長から寝返った荒木村重が主たるキャストですから、歴史小説ですよね。当時の織田方や反織田の勢力図、また一向一揆の門徒の心情もあれば、新興宗教だったキリスト教の事も描かれています。

 

という事なら歴史小説なのですが、この籠城中のお城ってミステリー好きからすると、恰好の「密室」なのでしょう。実際にお決まりの「密室殺人」が発生します。当然、利害関係者が何人かいて、それぞれにアリバイがあって、その手口やトリックが開示されていく様子も十分に楽しめるのです。

 

 

  籠城中という特殊性

 

一年半に及ぶ籠城なのですが、いくらかは行き来も有ります。ですから完全に密室ではないのですが、この微妙に外部の情報が入ってくる、というのも多くの籠城中の人間に取ってはストレスですね。元々、籠城して毛利の援軍が来て→打倒信長、を目論んでいるのですが、この毛利が動きません。

 

毛利が「来る」という派もあれば、「来ない」と主張する派も出てきます。ここで、発生する殺人事件だったり、死体不明事件だったりが発生します。城主はある意味で最高裁でもあるので、村重は出来れば万人(この有岡城は広く内部に田んぼや畑、住民がいる)が納得する「お沙汰」を下して、籠城中の士気を高めたいのです。士気の衰えは、逃亡や内部分裂につながってしまいます。

 

読んでいて、こんな密室も有るんだぁ~と思いました。いやぁ~作家さんって凄いなぁ~。

 

 

  安楽椅子探偵

 

それと推理小説には、この「安楽椅子探偵」なるジャンルがあるそうです。この探偵、現場に出かける事もせず、室内に居て来訪者やその他の情報を元に(だけで)推理をして事件を解決に導くという探偵だそうです。

 

籠城が長くなって、しかも難事件が発生する有岡城で荒木村重は困っています。しかし、相談するに値する重臣も居ません。そこで、村重が相談するのは、なんと投獄している軍師官兵衛なのです。官兵衛は、ずっと投獄されれいるので、現場に出かける事は出来ません。また収集できる情報の量もほとんどありません。

 

しかし、官兵衛は今までの経験や洞察力で、荒木村重や彼の部下、そして毛利を始めとする外部の動向を推理するのです。
 

この推理は、捜査で新事実が登場するって事は少ないのですから、読み手も同じ条件とも言えます。読み手も、投獄されてる官兵衛と同様、想像力を働かせて、その推理を楽しめる、と思いました。

 

いやぁ~、面白かったです。