文庫の新刊コーナーで発見。これも映像化されるだろうか~ドラマ向きなお話だろうなぁ~。

 

この本、いろいろとオマケが付いてまして、その一つが筆者からのメッセージカード。私が買った文庫には

これが付いてきました。「イヤミス」は湊かなえさんのミステリーに付けられた分類です。読後に嫌な(イヤ)な気分にさせるミステリー(ミス)を略して「イヤミス」っていうジャンルでして、湊さんは「イヤミスの女王」とも言われたりします。

読者はミステリーを読んでいても、心の底では勧善懲悪で、最後には悪いやつは取っ捕まって、事件は解決、っていう展開になるだろう~と思っていると思うのです。ところが、そういう期待をことごとく裏切って「えぇ~こんな終わり方ぁ~後味悪ぃ~」

 

さて、脱イヤミス本の

「物語のおわり」です。とある田舎のパン屋さんのお嬢さんはお外の世界にあこがれています。ところが、乗り物酔いがひどくて、修学旅行ですら行けない状態。そんな彼女が書いた物語を読んだ友達はすごく喜んでくれました。

その友達は上京して、作家さんに弟子入り。その作家さんが、彼女の物語に関心を示します。外の世界に行ってみたい、という彼女の気持ちは揺れます。もう幸せな結婚をしていた彼女は、一度は諦めますが、ある日、バスに乗ります。でも、バスを降りた彼女を待っていたのは、優しい旦那さん。そして、このお話はここで突然終わりなのです。

 

そんな彼女が書いた、自伝のような短い物語が、ずいぶんと年月を経て、北海道を旅する人たちの中で伝わって行きます。自伝のような物語は結末がなく、バスを降りたところで終わっていて、その後、どうなったか、は書かれていないのです。旅する人たちは、それぞれの考えで、その後を考えます。

 

舞台の多くは北海道。実は学生時代に何度か行っていたし、昨年は旭川の同業者さんの見学で出かけています。その時に、旭川→釧路をレンタカーで走りました。この物語に登場する場面も多くあってなんだかうれしい。

物語の中で、この短編に触れる登場人物たちも北海道を旅しています。心にいくらかシコリのようなものをもっていますが、旅する気持ちが少しは心を開くでしょうし、出会った短い物語を「自分なら」と考えることで、前に進む力をもらうような。

そうやなぁ~、「答えは自分の中にある」のですよね。

 

自転車で旅する人物も登場します。私が学生の頃は自転車で北海道一周する学生さんもおられました。一直線の道路は果てがないように思えてしまうって言われていて、実際車で走っても、すごいところです。たしか、湊さんも大学時代に自転車でツーリングなどをされていた頃があったような~。

 

ただ、登場人物は皆さん、こころにシコリをお持ちなのですが、もっと若い人たちの中には、漠然と不安はあるけど、それが何かはわからない、とりあえず今が平穏なら、と考えるような人お多いと思うのです。そういう若い人も出てきてほしかったように思えます。

 

文庫のおまけはまだ有って、

これは応援ペーパーと題した資料。裏面が物語に舞台を地図に落とした

が登場します。実際に、北海道の街の位置関係を把握するのに役立つかな。それと、距離感か。

 

文庫の帯の裏には

手書きのあの短い物語が印刷してあります。

しかし、湊さんは、作家になるきっかけが家事がひと段落して、自宅にあったパソコン(ソニーのBIO)の有効活用から始まったと書かれていたので、手書き原稿ってねぇ~。

 

まぁ出版社の方も「脱イヤミス」にご熱心ってことらしいです。

 

 

 

答えは自分の中にある。