先日の『「労働法制の素人」とされた八代尚宏氏のカラーを隠蔽しつつ労働ビッグバン法制化を試みる?
で紹介した記事、

  日経BPnet 『「労働ビッグバン」は消えたのか 』(荒川 龍=ルポライター)


の、ミスター・ホワイトカラー・エグゼンプションこと八代尚宏氏の主張の続きが掲載されていました。


時事ドットコム 2007/09/11-12:51
「家庭だんらん法」に言い換え指示=「残業代ゼロ法」で舛添厚労相

キャッシュ がありました)


このおよそ間の抜けた提案の記念日として、記事の中で八代氏(とその背景にある自公経団連)の思いが露呈している部分を抜粋します。

雑感ですが、それにしてもこの「お利口さん」の言葉遊びを見ていると、たとえば、実際にルービックキューブを触ったこともない人が、「俺の脳内ではあんなものは10秒で完成できると判断できる」と得々と話している姿などが想像されます。


参院選の結果によって、WEはすぐには通らないかもしれませんが、国会審議を必要としない省令や実績の積み上げ、それにメディア戦略や労使関係の縛りのなし崩し化によって、いわゆる日本の労働慣行の「改善」などで、チーム経団連・チーム自公・オール新自由主義者の意図するシナリオに持ち込もうという意欲が満々です。

小さく生んで大きく育てる、という毎度の目論見です。


国会での監視・追及を強く願います。

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日経BPnet 「労働ビッグバン」は消えたのか

第5回

解雇ルールを法制化した労働市場が必要 八代尚宏・国際基督教大学教授インタビュー(2)

から抜粋:


企業の枠を超えて、円滑に転職できる労働市場の創設が必要


八代 企業内での特殊または専門的な訓練が重要な工場では、確かに企業内での訓練が重要です。しかし、仕事を効率的にすすめるためにIT技術の活用が当たり前となっている職場のホワイトカラー層では、より一般的な業務訓練の重要性の方が高まっています。また、現在のように変化の激しい時代に、過去のように10年、20年かけて形成した技術はすぐに陳腐化しませんか?
熟練労働者を安易に解雇すると企業自身が損をする可能性がある、というのは規制論者の典型的な考え方です。経営者の能力は低く、彼らは放置していると過ちを犯すから、規制や法律で守ってやらなければいけないというわけです。


それに対して私は、『企業経営については、国や学者より、経営者の方がはるかによく分かっているはずだ』という立場です。第一、分かっていないと企業が倒産してしまいますからね。

という経営者が労働における神の見えざる手的な機能を持つという当初の主張あるいは信念あるいは妄想と、

解雇にはしかるべき金銭賠償と再就職支援までをセットとするべき というチャプターから:


過去の高度経済成長期に成立した終身雇用、年功賃金制などの慣行を、経済環境の変化に対応した新たな雇用ルールへと改革することは、既得権を持たない大部分の労働者と、企業の双方にとって利益になります。十分に競争的な市場では、企業の利益と労働者全体の利益は基本的に一致する、というのが私の考え方です。

という労使本来仲良し説と(しかも「私の考え」とことわっていますね)、

終身雇用・年功賃金制は、伝統的な日本文化とは言えない  というチャプターから:

しかし、企業側も優秀な労働者には辞めてほしくないので、そのためにどうするかは当然考えます。企業が一方的に何事も決められるわけはなくて、たえず労働条件だって良くしていかなくてはいけません。米国のように労働者が企業を選ぶ自由を高めることが大事です。

という、優秀であれば辞めさせられない(けどそうじゃなかったら知らないもんね)説は矛盾してやしませんかね??
労働組合も優秀な労働者以外は守らないというのは「当然の前提条件」なのでしょうか。
・・・というよりユニオンショップ制の組合に労使関係の拮抗と協調のバランス、という機能のうち何を期待できると考えているのでしょうか。


さらに、昨今の技術の高度化は技術者の陳腐化あるいは経験不足をテクノロジー自体が補完するような面もあるからり、むしろ、人心掌握能力や複雑な業務環境の把握などの力が熟練した被雇用者の特性として重用される必要があります。そうでなれば、職場環境だって崩壊するでしょう。

また、すさんだ労働環境の中では付加価値を生み出す組織能力は間違いなく低下します。


残念でした、経営者さん。

などということは今に言われ始めたことではないと思われます。

この、世の中の現実を知らない人(=八代氏)の倫理・判断レベルがどれほどのものか伺い知れて唖然とさせられます!


そして、同じ連載の最終回(筆者の忍耐に感謝します)

労働ビッグバンは時間をかけてでも実現すべきだ 八代尚宏・国際基督教大学教授インタビュー(3)

では、

労働分配率は不況期に上がり、好況期に下がる傾向がある  というチャプターから:


(労働分配率の推移グラフあり)

■ですが、経済アナリストの森永卓郎氏は、日本経団連の政府・与党への2007年度「規制改革要望」についての記事の中で、「この5年間で正社員が300万人減った。この間に名目国内総生産(GDP)は22兆円増えたが、被雇用者の報酬(先の労働分配率で言う「雇用者報酬」。ここでは労働分配率の計算で「国民所得」の代わりに「国内総生産」を使っている)は5兆円減。誰が誰の犠牲で潤っているか、それは明らかだ」(東京新聞、7月19日)というコメントを寄せていらっしゃいます。労働分配率の算出に、減価償却も含んだ国内総生産を使うのは誤りとの指摘もありますが、要は、好況なのに分配率が下がっているのは変ではないのか、という問題提起です。


八代 ですから、それもピーク時から見て「下がったから、けしからん」ではおかしいわけですよ。そもそも、労働分配率は、経済が停滞する不況期に上がる一方、好況期には下がるのが普通です。その理由は、景気が良くなれば国民所得がグンと増えて、雇用者報酬の割合が相対的に下がるせいです。反対に景気が悪くなれば、国民所得が減るせいで、雇用者報酬の割合は大きくなります。

と、一般論にすり替えていますが、個々の企業の配当性向、取締役報酬の二倍化などを考慮して、かつ市場最高益を得ている企業の労働分配率までが抑制されていることを説明できるというのでしょうか。

そもそも、よーく読むと、好況期には下がるのが普通ですと言っているだけで、今回はその効果によるものである傍証を出しているわけではないわけです。


【ということで森永卓郎さんの参考記事です】

日経BPnet SAFETY JAPAN 節約した人件費の向かった先

景気が回復しているのに、働く人の分け前が減っている――このような矛盾した現象を見て、わたしのような人間は「これはひどい話ではないか」と指摘する。

 ところが、それに対して政府与党や大企業、あるいはそちら側の立場に立つ評論家は、次のように反論する。「確かに、非正社員増によって労働者の収入は減った。しかし、バブル崩壊のなかで低迷する日本企業がグローバル競争で勝ち抜くためには、コストを削減して製品価格を引き下げなくてはならない。そうしないと、国際競争に勝ち残れないのだ。非正社員増はやむを得ない選択だったのだ」。

 つまり、人件費の圧縮は、企業による必死の生き残り策の一つなのであり、これをしなければ日本企業は海外企業に太刀打ちできない。いい悪いは別にして、非正社員の増加は必要なことだったというわけだ。

 一見、もっともらしい理屈だが、果たして本当なのだろうか。そこで、これまでのGDP統計をチェックしてみたところ、興味深い事実が浮かび上がってきた。


概算結果をぜひ上のリンクからご覧下さい!


・・・八代インタビューは続きます。

真の「裁量労働制」が違法行為になってしまう労働基準法  から:


八代 労働基準法では、深夜10時から翌朝5時までの残業と、法定休日の労働では、割増賃金の支給が必要になります。

例えば、午後から出勤して午後10時以降まで働く場合、あるいは平日に休んで休日に勤務する場合でも、いずれも深夜・休日に実際勤務した時間に応じた残業手当を受け取らないと、それは労働基準法違反で、支給すべき残業代を払わない経営者は罪に問われます。

実際には、マスコミ関係者や大学教員のように裁量労働制の対象となっている労働者は、深夜や休日も含めて、いつでも好きな時間に働いてよいと考えられていますが、実は、それは、サービス残業と同じ違法行為をともないます。それらの違法行為は現在放置されていますが、仮に、何か問題が生じた場合には、労働基準監督署から摘発されるリスクはたえずあります。

しかし、こうした事例は、現場での働き方に合っていないわけですから、そこが裁量労働制の限界であり、現在の労働基準法の不備とも言えると思います。

どうしてまた、「マスコミ関係者や大学教員」という特殊なパターンに属する事例を引き合いに出すのでしょう。


問題とされているのは、管理職としての権限や手当ても出されない若手にもWEを適用し、そしてもちろん管理職はアメを与えられていることを口実に無限の持ち帰り業務や休日出勤、与えても自己能力不足を口実にされて取れない年休などで「だんらん」を崩壊させることではないでしょうか。

また、よしんば現在の労働法制に解決すべき課題があったとしても、それは「八代君」の言う方法で解決されえないことは先輩(高梨昌・信州大学名誉教授)がかんで含めるように説明していた通りです。


専門家を標榜する以上は、「胃が痛い?だったら解頭手術をしてみましょう、という医者はいないでしょうけれどあなたはどうですか」、ということを、この人物に伝えたいだけのことです。


だんらんできるもできないも自己責任?ご冗談でしょう。


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沖縄防衛局長から、「再編交付金はボーナス」というこれも驚愕の発言があったので、メモしておきます。


八代WE氏と同じように、「支配する側」の傲慢な視線に立つ者が、どんな無神経な言葉を吐き出すか、怒りを覚えます。

これらの記事は全文掲載したいのですが、諸般の事情により少し様子を見ます。

沖縄タイムス 2007年9月11日(火) 朝刊 2面

「再編交付金はボーナス」/防衛局長着任会見
 沖縄防衛局の鎌田昭良局長は十日の着任会見で、再編交付金について「交付することが、再編の円滑かつ確実な実施に貢献するかどうかで判断している。ある種のボーナスのようなものなので、一生懸命やった(協力した)ところにはその分、手当てするというシステム」との認識を示した。防衛省が現時点で名護市を交付対象としない理由については、同市が米軍普天間飛行場代替施設の環境影響評価(アセスメント)方法書の受け取りを保留していることが要因との見方を示唆した。
 鎌田局長は「名護市はアセス方法書の受け取りを拒否している事態にあり、総合的に勘案してどうするのか決めていく」と指摘。同時に「われわれは交付したいと思っている。条件が早く整うことを希望している」と述べた。

(以下、リンク先記事をお読みください)


琉球新報 07/9/11
再編交付金は「ボーナス」 鎌田防衛局長が言及
 【名護】沖縄防衛局の鎌田昭良局長が10日の就任記者会見で再編交付金について「ボーナスのようなもの」と発言したことに、普天間飛行場移設先の名護市の幹部は「不適切な発言だ」と述べ、不快感を示した。
 同幹部は「交付金は住民の生活環境など、ほかの地域と比較して(基地の)負担で疲弊しないようにするためのもの」と指摘。「名護市は10年間もこの問題に翻弄(ほんろう)され、既に負担を受けている」と振り返った上で、米軍再編にも協力していることを強調し、「当然支給されるべきだ」と述べた。防衛局長の発言には「交付金はボーナスでも何でもない。不適切だ」と批判した。
 県幹部は、発言の詳細は分からないとした上で、「われわれは基本的には負担の増に見合うものとして交付金が交付されると理解している。どういう意味で言ったのか分からないが、地元に誤解を与えかねないので慎重に発言すべきだ」と述べた。

名護市幹部 「不適切」と反発

 【名護】沖縄防衛局の鎌田昭良局長が10日の就任記者会見で再編交付金について「ボーナスのようなもの」と発言したことに、普天間飛行場移設先の名護市の幹部は「不適切な発言だ」と述べ、不快感を示した。
 同幹部は「交付金は住民の生活環境など、ほかの地域と比較して(基地の)負担で疲弊しないようにするためのもの」と指摘。「名護市は10年間もこの問題に翻弄(ほんろう)され、既に負担を受けている」と振り返った上で、米軍再編にも協力していることを強調し、「当然支給されるべきだ」と述べた。防衛局長の発言には「交付金はボーナスでも何でもない。不適切だ」と批判した。
(以下、リンク先記事をお読みください)

Wikipedia ボーナス→賞与
 日本では古くは江戸時代に商人がお盆と年末に奉公人に配った「仕着」が由来と言われている。


まったく、従順さがボーナスの支給に影響と明言する人は、やはり身分制度の中での「仕着」をイメージしているのかもしれません。


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