いよいよその時がやってきた
「H君声張らないで良いからね普通に無理せず大丈夫だからネ!」
大劇場じゃないからネ
最も大劇場だったらマイクが付くか(笑)
何はともあれ
声がやばそうになったら舞台上にいても楽屋にいても自分に「ある合図」をすることになっていた

泣いても笑ってもその時はやって来る
ならば笑って迎えよう
とは言え中々に難しいものだ
ただ人生不思議なことに
実感が湧かないこともあって泣きも笑いもしない時もある
泣くも一生笑うも一生
取り越し苦労って事もある
ならば全く気にせずに生きていく方が良い
先のことはわからないし過去も戻らないし
とは言え人間という生き物は何故か
コレから起きるであろう事に気を揉み気を病む
生き物で何故かそれを楽しもうとする残酷な生き物である(笑)
こん時も御多分に洩れづ怖いもの見たさの浅ましい根性がクビをもたげた
然も当事者であるにもかかわらずである
ただ
こういうときは一層他人事の様に構えていた方が良い
「アンタ方も大変ダネ!でもなる様にしかならないよ!」ってネ(笑)

そしてそのなる様にしかならない時がやってきた
呼び込み曲の浪曲がアップしていくと同時に客電の明かりが緩やかに落ちていった

オープニング曲の山口百恵さんの歌声が優しく舞台上に舞い降りてきた…


舞台袖でしっかりと両の手を握りしめ拝む両の手はじわっと汗をかいていていた

勿論好奇心の虫はとっくにそのクビを下げていた…




そして……