ダメ出し

カーテンコールの是非とある意味並んで良く言われるのがこのダメ出しの意義だ
というかダメ出しというこの言い方だ
ダメって何?
いやぁわかるよダメなところを修正していこうって事でしょ?
ただ自分的にはこの「ダメ出し」って言葉は何か腑に落ちないのよね?
生でやってりゃ間違うことだって一つや二つはあるでしょ?
要は本人がそれを認識しているか否かを確認する作業でしょ?
よっぽどじゃない限りわかってると思うよ
たまに忘れてる時もあるけど(笑)
要は確認したいだけなら
ダメ出しじゃなくて「確認」でいいし
新たに何か変えたいなら「変更」でいい
まっ生だからお客様入れてやってみないと分からなかったところもあるだろうから多少の軌道修正は良いけど基本本番入ったらやめてほしい
だったらコメディーとしてあそこで何かできないかなぁ?とか今日はたまたまアドリブ受けたけど明日は忘れていこうとか
その程度の確認作業で充分だと思う
誰でも一つくらいは反省点はある筈
そいつを持って帰って明日やってくれれば良い
自分はそのくらいに考えているので
基本芝居終演後のダメ出しや翌日の集合時間後のダメ出しはやらない
せいぜい円陣組んだ時に「面白いので怪我しないでください」くらいしか言わないのよね

てなわけでこの日も無事終了した旨を皆と分かち合い解散した
ただH君には「早めに休んでネ喉温めて朝起きてやばかったら耳鼻科行って来てお金払うからネ!兎に角今日はお疲れ様でしたありがとう」
「お疲れ様でしたあのぅ今日は飲みには?」
「アホか」
皆大笑いした
「俺は行くよ!」Aさんがかました(笑)

兎に角今日は…
言葉が出なかった

明日
明日からまた初日…
芝居はもともと日々初日であり千穐楽なのだ
お客様にとってはもうその日しか来れない方がいらっしゃるし
その日の芝居はもう二度と出来ない
昔プロ野球の野村克也さんが言ってた
「我々はシーズン中は毎日試合があるが
お客様にとっては大切な二度とない楽しみにしていた今日の試合なのだから我々は決して手を抜くようなことがあってはいけない」

毎日が思い出になるような芝居を打たなければいけない
その為に皆一丸となって必死にその舞台を務めなければならない
何があろうとどんなに苦しくても…
自分の師であり大尊敬する由利徹の言葉に
大好きな格言が有る
「子供の涙は虹の色
     喜劇役者の涙は血の色」

「芸は軽く汗をかいてはいけない」

決してお客様の前では流してはいけない
役者の涙や汗は心で流しグッと踠いて堪えて
そうして何事もなかったかのようにサラッと
一流の芸を楽しんで頂く
それが我々の仕事だから…
あっコレは由利徹先生から学んだ持論です(笑)
おっと話が横道にそれてしまった
コレが自分のダメなところ(笑)
さぁ自分にダメを出したところで
流石に今日は飲まずに帰って鋭気を養うこととするか…
最寄りの駅に着きコンビニで缶ビールでも買って帰るか?

それとも…
「いらっしゃいませ!」
気がつくと彼女と「居酒屋青ムラサキ」に入っていた
ホントにダメな男だと
ダメを出しつつ中ジョッキを煽ってしまう

ダメなモノはダメでも
どんな時でもビールは美味い
普通?公演中は初日と千穐楽の打ち上げだけで
他の日は大抵家で風呂に入ってから軽くやって
早く寝るってのが
真面目な方々の有り様らしい?のですが
勿論我々は毎日毎日のように飲みクールダウンしてから帰るのが役者の意気地だと(笑)
我が師匠達に嫌というほど教え込まれたのです(笑)
ただこの日はH君の件があり明日は我が身と戒めようと思ったのですが…
「ええとイカの塩辛とホッケで」

「一杯だけだからね!」
彼女の声は店のBGMに溶けていった
そして自分の脳みそも…

馬鹿は死ななきゃ治らない
馬鹿は死んでも治らない
ならば
オイラは馬鹿のままでいい
ただ生きていられるなら…

明日は3日目





そして