初日
開場
お客様の話し声が呼び込みでかけている浪曲と相まって一層の緊張を覚えた

あぁもどかしい!
ココの小屋の構造では客席の様子を見ることが出来ない
少しでも客席が見えると落ち着くんだけどなぁ

スタッフでお願いしていたAさんが舞台裏に来て「結構並んでますよ!」
「ありがとうございます」
小さな声でやり合った…
流石Aさん気が効いてるよな
「5分押しでお願いします」
Aさんにその旨を伝えて再びの化粧前集中に入る

本番前と言えば余談だが良く本番前に
前説と称して演者やスタッフが公演の案内やら注意事項やらを説明して本番に入るっていうのが有ると思うが
こん時の自分にはどうしてもそういう
オプション事?ってのが納得が出来なかったのよね?要は芝居前にお客様に顔を見せたくないってことなんだよね!
やっぱり虚構の世界の前に現実的な思いをして欲しくないのよね?最低限のマナーは影マイクで充分だしね
小劇場独特の世界観や雰囲気も込みの公演を楽しんで貰いたいって考えると前説無しの
スタイルの方が良いと思っていたのよね
こん時はね(笑)

お客様のざわめきが大きくなるのと比例して
化粧前の目覚まし時計がその時刻を指そうとしていた
再びAさんが袖に来た
「ではお願いします」

呼び込み曲の浪曲からMゼロへと曲がクロスした
初日開演!
5分押しながら無事幕が開いた
緊張から緩和へと…
MゼロUPからの暗転中
影ナレが入る
「君と一緒に死ねたら良かったのに…」
山口百恵の夢先案内人がカットインと同時に
明かりがフェイドイン
舞台の下手上の梁からロープが下がっている
ゆっくりと明かりがアウトするとクロスで曲もアウトしていく
クロスで下手袖前から鈴を鳴らすような音が入るとゆっくりと舞台上に薄暗い雰囲気の明かりが入る古く寂れた旅館の入り口付近
ガラが鈴のついた杖をつきながら登場してくる
続いてH君とTさんがカップル客としてガラに案内されながら登場する
こうして物語りのプロローグが静かに始まった

薄暗い客席が次第にその目に入ってきた
凄いことになっていた
と言っても呑めや歌えの大宴会をやっていたりましてやキャンプファイヤーをやっていたワケではない

そう
満席状態に見えた
イヤ
間違いなく入っている
やはり招待券作戦が功を奏したのか?

何はともあれコレで役者のテンションも上がっていくだろう

ヨシっ!
自分だけじゃなく出演者皆がそう思った筈だ

「いける!いけるぞ!」

プロローグから一場ニ場と進む
ミスらしいミスもなく芝居はいよいよ見せ場の
一つAさんとH君のダンスショー?そして
スタッフ兼ワンポイント客演のA君の効果音師が登場する
みんな頼んまっせい!

何故かまだ半分もきてないのに目頭が熱くなってきた
舞台裏の化粧前でそっとティッシュでその
光るモノをおさえた

客席が沸いて

きた!






そして……