「すいません!コレどうやれば?」
ゲネプロ前の場当たりでオペレーター部屋から
照明のC君が顔を出して言った
慌ててAさんが対応してくれた
「どうしたの?」相変わらずの呑気トーンで聞いた
しかしAさんにはいつも感心させられる
モノを知り過ぎるくらい知っていて如何なる時も感情的にならず怒ったりせず冷静に事にあたる誠に頭が下がる
不備な点はAさんがレクチャーして事なきを得たけどこの先も思いやられるだろうなぁ
まぁ仕方がない自分が決めたことだからね

ここ迄聞いて何かにお気付きではないだろうか?(笑)
えっ?まだ分からない?
では順を追って説明しよう(笑)
安い探偵小説の始まりみたいだな!

前にも少し書いたかもだが…

「ホントに出来るの?」
「大丈夫Aさんにもお願いしてあるので」
この会話は極秘に自分と彼女が交わした秘密事項だった
筈もなくこの会話の数十分後の最初の顔合わせの時に皆にぶちまけたお願い事項だった
何が?
先ずは照明のオペレーターを自分のバイト仲間のC君に
音響のオペレーターを同じくバイト仲間のM君にやって貰うという
前代未聞の大暴挙の伝達だった(笑)
理由はお金がない!それだけだった!
そしてまんまと自分の口車に乗ったC君とM君
今でも感謝してます(笑)
自分が売れたら自慢して下さいまし(笑)
てなワケでこの公演は正真正銘素人のオペレーターで場当たりをやりゲネプロをやり初日公演をむかえようとしていた
何というかかんというか(笑)
バイト先で二人に話した時正直断られると思っていた…
ある著名な演劇人が前に
「芝居作るには遠くのプロより近くの素人」
という名言を吐いた方がいて
その頃の自分もそう思っていた….心から(笑)
まっこの名言は実は深い意味があるので
決して安易にマネしないでください(笑)
この名言に絆され彼らにお願いしたワケではなく最初Y君やH君にお願いした時になんとなく興味深い顔で側にいたってだけなんだけどネ(笑)
整理すると
Y君は油絵描きの浪人生でチラシやら絵幕やらを制作して貰う
H君はもとは制作事務所のADさんで脚本と役者を
C君は電子関係の専門学校を卒業してこの
警備のバイトをしててでもって何故か照明を
お願いした
M君は何をやってたかは忘れたが何か出来そうなオーラを出していたので音響オペレーターを頼んだ何故だかのちに受付をやって貰うことになるとは…
まっ兎に角この出会い達は今でも信じられないくらいの出会いだった
自分だけかもだが(笑)
この出会いが無ければ今の役者人生は無かったと言っても過言では無い
感謝しかない!
果たしてそんな安っぽい友情?で芝居が公演が出来るのか挑戦しかなかった
ホント無謀だったネ
彼等の根拠のない勇気が湧き起こった時期でもあったのかもしれないネ

信じられないけどやっぱりやればできるモンだね!
それにこん時はやれるとしか思えなかったしね!
然もこの頃の江古田ストアハウスをご存知の方はお分かり頂けるかと思いますが
この頃の劇場の作りは素晴らしくビックリハウス的な造形でしてお世辞にも使い勝手は良くなかったのよね
何故オペレーター室とかブースとか言わずに
オペレーター部屋と言ったのか?
正確には隠し部屋若しくは屋根裏部屋
オシャレに言うとロフト(笑)
違う!ロフトは違うか⁈
いずれにしても説明しようにも中々に難しいのよね
簡単に言うと客席の後ろが押入れ収納の様になっていてその下が狭く低い控室的な通路があってその奥に机一つ椅子一つの事務所とは名ばかりの個室というか通路の角の一角に机に椅子と
ちょっとした棚みたいなのがあって何とその上に隠し部屋みたいなオペ室というか窮屈に卓に並べられた音響卓と照明卓
何が凄いかってココは何と立ち上がると頭が天井にぶつかるというか肩がぶつかるくらいに低いし狭いのよね
なので腰を曲げながらこの部屋に事務所と名のついた入口横の梯子を登り中に入るや否や座る
一旦入ると何をするにも座りながらの移動になるのよね!やっぱり修行だよねホント良くやってくれたよね!凄い
なのでオペレーターさんは終始あぐら座りなのです
そして何が辛いかって自分達役者は当然の如く稽古が出来るが素人のオペレーターさんは稽古するにも中々大変で音響さんはまだ稽古場で
キュウ出しのタイミングなんかを合わせたり出来るが照明さんはそうはいかずキッカケや色みを書き込むくらいしか出来ないよね
それでも空いた時間でAさんがレクチャーしてくれた
兎に角この辺りのハードトークは尽きないよネ
まっ全ては自分の考えでやった事なので微塵も後悔も反省も無く相変わらずの根拠のない自信と開き直りでやるしきゃない!
ザ手作り芝居!

ツギハギだらけのゲネプロ
誰もが緊張の絶頂にいた
自分は出番と演出を行ったり来たり
何とかかんとかゲネプロが終わりをむかえていた
こんなボロボロだけどやっぱり好きな事をやれるってのは良いよね
まだまだ余裕は無いがこん時の自分達に向けて
もしも客観的に自分が言える事が有れば
それは
「コレ乗り切ったら確実に…」
ダメだ!やっぱり何も言えない
そのくらい必死になってやってる皆に安っぽい言葉はかけられないね…

そしてゲネプロが終わり…


「休憩しましょう軽く飯食べて18時開場で宜しくお願いします!」





そして……