根拠のない自信と世間との壁と甘え

良くやりたいと思う事と出来る事は違うって言うけど自分もそうだったネ
気がついたらやってた…
とは言え芝居はやりたい事ではあった

まさか自分が作る側にもなるとは去年までは思ってなかった(笑)

ただ単に外からオファーが無ければ自分で演りたい事をやれば良いだけの事と単純に閃いた(笑)
そう思ったらもう動いていた
多分今の時代だったらもっと早く行動に出ていたかも知れない
イヤひょっとしたら逆に慎重になって結局出来なかったかもだ
携帯電話というモノの威力はやっぱり凄まじいモノがあると思う
初動が早過ぎてしまい考えが浅いウチに連絡してしまい訂正訂正で世が明けてしまう(笑)
その点無い時代は家電話も無いから公衆電話に行くまでに慎重に考える
10円玉も勿体無いし(笑)

そんな決心を付けつつ役者一人一人に電話をかけて決定を告げ相手の気持ちも確認する
このやり取りも一発で相手が出ればいいが出ないと何回も掛け直す
その間に言う事を確認したり訂正したり…

面倒くさいがこの時代はコレが当たり前だった…
ファックスも未だ高い時代だったネ

Aさんが電話に出た
「実はこの話し無かった事に…」

えっ⁈
何が何があったのか?

前途多難な船出になるのか?
折角H君が台本あげてくれたのに!
「えっ!どうしました?」
Aさんの声は心無しか疲れているように聞こえた…
やばい!
Aさんは俳優養成所時代の同期で自分より4歳年上の温厚でR大学卒のエリートで養成所を出たあとは杉並区にあった劇団に入り新劇系の芝居をやっていたが色々あって辞めたばかりだった
なのでタイミングよくオファー出来たと思っていたのに…
しかもその劇団は持ち小屋があったので照明から音響と小道具舞台装置に至るまでなんでも御座れのザ舞台人だったのだ
なのでめちゃくちゃ心強く頼りにしていたのだ
然も芝居も上手いと来てる…
いやぁ参った!

しかしこの時ばかりは簡単に引くワケにはいかなかった
小屋も仮押さえしてたし他の役者もほぼ確定していたのだ

Aさんの断ってきた理由とは?
「そこをなんとか…」
金を借りる時にしか使わないと思っていた言葉をココで使うことになるとは…
「実はね…」
10円玉が落ちる音が受話器から聞こえる声に重なり妙な苛立ちを覚えた

首と肩に受話器を挟みおもむろに財布から
10円玉を取り出しては投入した

大通り沿いにあった公衆電話
車の走る音と10円玉が落ちる音が相まって
自分のプリン脳みそは今にも崩れてカラメルごとタラ〜と落ちてしまいそうになるかのようだった





そして……