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4月5日-7日
フランス スーパーバイク選手権(以下FSBK)の開幕戦が、ルマンで開催されました。
日本でいうところの「全日本ロードレース選手権」と同じく、フランス国内の最高峰ロードレース選手権がFSBKです。
FSBKのEUROPEAN BIKES(ヨーロピアン バイカーズ)クラス(※)で、BMW S1000RRに乗る女性ライダーが3位に入賞しました。
※当初の記事で「SUPERBIKE」と記載していましたが、正しくは「EUROPEAN BIKES」でした。
EUROPEAN BIKESクラスはその名のとおり、BMW、DUCATI、アプリリアなど、ヨーロッパメーカーがエントリーできます。
BMW S1000RR
排気量:999cc
最高出力:154kw(210PS)/13750rpm
最大トルク:113Nm/11000rpm
車両重量:197kg
※上記はメーカー出荷時の数値です
S1000RR
レース2 ウエットコンディション
決勝では29台が出走
男性ライダーとの混走であり、40年のキャリアを持つライダーもいる。
20歳のライダーは、ルーシー・ブデソール(Lucie Boudesseul)選手。
フランス ノルマンディー出身、 2003年7月3日生まれ。
2023年から同クラスに最年少ライダーとして参戦したブデソール選手は、7月に自身初となる表彰台を獲得。
2023 パウ・アルノス・サーキット
FSBK EUROPEAN BIKES(ヨーロピアン バイカーズ)クラスの歴史において、女性初の表彰台獲得という偉業を達成しました。
もともと、バイク一家だったのか?
親兄弟がバイクに乗っている、あるいはレースをやっている。
そういうライダーもいますが、ブデソール選手は真逆。
両親はレーサーどころか、バイクに乗ってすらない。建設業界の専門家で、バイクに乗ろうともしないそうです。
なぜ、バイクレーサーを目指そうと思ったのか?
ブデソール選手が5歳のころ、インターネットでMoto3(ロードレース世界選手権)を観て、バイクレースに夢中になった。
それ以来、プロレーサーを夢見て努力するようになったそうです。
しかし、心配した両親がバイクレースに反対したため、レースデビューは14歳から。
両親の反応は?
お父さんはそれほど心配することなく、レースを楽しんでいる(しかし、バイクには乗ろうとしない)。
お母さんはとても心配していて、ブデソール選手がバイクで走るのを見ることもできないとか。
学業とレースの両立
バイクレースと並行して、スポーツカレッジに在学。特に解剖学、生体力学、生理学、その他オートバイのスポーツ活動に関連した科目を勉強している。
「少なくとも私には退屈している暇はありません。」
FSBK スーパースポーツ300に参戦
2019年から2022年までの4年間、ミドルクラスでレースキャリアを積んだ。
カワサキ Ninja400 2022年
2024 NINJA400 KRT EDITION
排気量:398cc
最高出力:35kW (48PS) / 10,000rpm
最大トルク:37N・m (3.8kgf・m) / 8,000rpm
車両重量:167kg
ブデソール選手が幸運だったのは、2017年に女性チームの創設を検討している人物と出会えたこと。
(その人物を彼女の両親が知っていた)
2018年、ルマン24時間耐久レースの最中にMotoGPライダーが使用するバイクシミュレーターを試し、Dvs Motorsport社のデヴィッド・ヴェイヨン氏のサポートを受けながらトレーニングをおこなうようになった。
DVS MOTORSPORT SIMULATION Moto GP ドライバー向け公式トレーニング バイク シミュレーター
WGP500 ロードレース世界選手権 '99 シリーズチャンピオン アレックス・クリビーレ氏
クリビーレ氏はトレーニングシミュレーターの開発を担っていた。
HONDA NSR500
400ccから1000ccへ
2023年から、ヨーロピアン バイカーズクラスにチェンジ。
さきほどお伝えしたように、初の表彰台獲得を達成しました。
のちのインタビューで、ブデソール選手はこのように答えています。
「以前は400ccのマシンに乗っていましたが、今シーズンは 1000ccに移行しました。
これは大きな違いです。
なぜならマシンは、はるかに強力で重く、かなり発達した筋力を必要とするからです。
だれもが、それは悪い考えであり、特に女性には不可能であると考えていました。このバイクで、わずか5レースを戦っただけですでに表彰台に上ったことは、チャンピオンシップで多くの話題を呼びました。」
S1000RRで肘すりするブデソール選手
土壇場で2大スポンサーを失う
2023年。
MotoGPを夢見るブデソール選手は、前段階としてJuniorGP「Moto2」クラスへの参戦を予定していた。
※JuniorGPは、MotoGP(世界最高峰のロードレース選手権)を目指す世界中の若手ライダーが参戦する登竜門的なレース。
レースには、バイクだけではなく、メカニック、エンジニア、スチュワード、テクニカルディレクターなどを含むチームが必要。
もちろん、無料ではありません。
「私に要求された金額は小さな家一軒分に相当しました。」
スポンサーを探すために多大な労力を費やした結果、彼女はなんとか資金を集めることができました。
しかし、土壇場で2大スポンサーが撤退し、JuniorGP「Moto2」参戦への期待は消えてしまうことに。
・・・
こうした紆余曲折を経て、2024年は、数ヶ月前にはバイク(S1000RR)が破損して、ルマン参戦が危ぶまれる状況。
そこからの表彰台ですから、ドラマがありますね。
2024 FSBK ヨーロピアン バイカーズ レース2:3位
2024 FSBK ヨーロピアン バイカーズ レース1:9位
編集後記
今年からスタートする「女子モーターサイクル世界選手権」や、「女子ヨーロッパカップ スーパースポーツ300」(Woman European Cup SS300)など、女性だけのレースと、男女混走のレースがあります。
「バイクは乗り物を使うから、男女差は関係ないのでは?」
バイクに乗らない方からすると、そう思われるかもしれません。
実際には体力といいますか、筋力を使うため、女性のほうが不利だと言われています。
ブデソール選手もそのことは重々、承知していると思います。
その上で、数年前のインタビューで「私は男女混走レースで勝ちたい」と話していたのを思い出しました。
執筆
参考
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