24-04-12 地獄獣 | ヤマダ・マサミ ART&WORK 検:ヤマダマサミ

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主に仕事に関わる、特撮、怪獣がらみのブログです。
ときどき、猫が登場します。

24-04-12 地獄獣

先日、花見ついでに、山吉屋の新作ソフビ地獄獣を写真撮りしました。

桜の前は人だかりがすごくて断念。人が少ない所でこそこそやっていると子供がこっちを指さし、ゴジラだゴジラだと騒ぎました。

晴天なら桜は青空に映えますが地獄獣なので曇り空で良いんです。雨中ならもっと雰囲気が出たかもしれません。

モノクロと赤へ転ばしたのは遊びです。製品はゴジラブルーです。

江戸時代の画家、狩野一信(有名な狩野派とは無縁)が港区の増上寺へ寄贈した「五百羅漢図」の中にある「六道地獄図」の地獄の狗がモデルです。ざっと200年前の感性です。

ぼくはこの絵を見つけてすぐ「ゴジラ」(54年)の絵コンテ(正確にはピクトリアルスケッチ)にある唐獅子タイプのゴジラと結びつけました。

その絵は映画の前に全員に全体のイメージを説明し、初の怪獣映画への理解を明るくするためのもので、撮影が始まってから絵コンテ代わりにされました。本多監督のスクラップブックにも複写したものが絵コンテ集と題して貼られていました。何冊か同じ物が作られたようです。

絵は、渡辺明特撮美術監督の下、美大生を3人くらい集めて旅館にこもって一気に描いたそうです。たしかに、ゴジラは3種類くらいのタッチの違いがあります。ぼくは恐竜タイプより唐獅子タイプに惹かれました。メディア上で出たのは、竹内博さんがやったファンコレが最初です。それから90年代へ入って「絶対ゴジラ主義」(角川)を出したときにその項目を設けました。本の中の絵は模写したもの。

ビキニ環礁の核実験に巻き込まれる前のゴジラはテリトリーの北上限界が大戸島近海でした。時化が続くとき、生け贄として若い娘を沖へ流す風習が語られます。畏れを敬う日本人の宗教観から、ゴジラは海の神様とされ、神楽を奉納する倣いが大戸島に残されました。

ゴジラはどういう生き物なのか? とても興味深いんです。

「ゴジラ-1.0」はそこが残念なんです。VSシリーズでもゴジラの前身は恐竜にされた。恐竜は絶滅するような脆弱性を持ち合わせた存在です。

香山滋はゴジラを「水棲爬虫類から陸上獣類へ進化する過程の生き物」とした。マニア度では、進化をテーマにした「シン・ゴジラ」に好みの軍配が挙がるのはその辺かもしれません。ゴジラの進化の最後はゴジラ人間、人間ゴジラなんですよ。そこも本の中で指摘しました。

そんなわけで、仏を護るインドの神将たちにも惹かれます。神と人間の融合ですよね。それぞれに特性があって。決して生物としての脆弱性は感じさせない。光の国の超人、ウルトラマンみたいなもの。唐獅子や迦楼羅もこの範疇で大好きです。怪獣の原形のような存在でした。

地獄獣のソフビは、「六道地獄図」にある地獄で亡者たちを嚇す狗の絵をモデルにしました。絵をそのまま立体化したらもっと唐獅子ぽい体にするべきなんでしょうね。ソフビはソフビの美意識です。

 

 

ところで、あらためて断らせてもらうんですが、ぼくはフリーのモデラー、造形家、原型師で、ソフビでは原型を作って、納品して終わりです。そこから先の生産ラインは工場がやり、販売はメーカーがやります。

いわば原型をつくって作業代金をいただく。そこから先の手間もかかるわけです。1年ぐらい経って商品がやっと出て、サンプルをもらえる。その頃はもうとっくに別の仕事をしています。

ですので、問い合わせはメーカー宛にお願いします。

こちらへ聞かれてもぼくから販売は出来ません。サンプルをもらう以外のストックは持ち合わせていません。

どうぞご理解下さるよう、お願いします。

 

地獄獣、怖い顔をして、愛嬌があります。

なんか喋りだしそうです。