23-03-08 中真千子さんの訃報 | ヤマダ・マサミ ART&WORK 検:ヤマダマサミ

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23-03-08 中真千子さんの訃報

中真千子さんの訃報を、親しくされていた佐藤利明さんの投稿で知りました。合掌。

東宝では、クレージーや社長シリーズ、若大将でお馴染みの中さん、特撮ではご存じ「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」(69年)の鍵っ子一郎くんのお母さん役が印象的でした。

お父さん役の佐原健二さんは、本多猪四郎監督にしたら「空の大怪獣ラドン」(56年)で主演を貼った佐原さんですから、途中、悪役の可能性に見事に応えた「マタンゴ」(63年)をはさんで、東宝怪獣映画卒業記念のような、庶民派の素敵なお父さん役をこなしました。中さんは料亭で仲居をしつつ一人っ子の一郎くんを想う優しい母親役です。

当時、母に連れられて観に行きましたが、佐原さんも中さんも、自分の父母の世代で、なんら違和感がなくて、それが嬉しくて、うちは父母と一緒に居られて良かったと、帰りは母の手をギュッと握ったものでした。

もう小学生になっていたので、母に連れられて行く映画館の最後くらいです。

良い映画でした。水爆大怪獣の脅威から15年。本当に、なんでもない庶民の日常を描いた一篇です。ささやかな幸せと、小さな勇気。それだけの映画なのに、楽しくて、怪獣も楽しめました。

93年3月。本多監督のお別れの会で、豪徳寺駅前から会場まで、さて道順はと思ったら一緒に行った同人の松本さんが、ほら、中さんが目の前だから、後に続けばいいんだよ、とあっさり。なるほど。東宝のお馴染みの監督やスタッフ、俳優たちが目の前を行きます。

中さんをお見受けしたのはそれから今世紀に入ってイベントなどで、遠目で、相変わらず、小柄で可愛いお方でした。

「ウルトラマンティガ」(96年)の36話でおばあちゃん役を61歳で演じていて、いまの自分の歳にあたり、改めてずいぶん可愛い61歳だなぁと思うばかりです。

その「時空をこえた微笑」は、大正時代からタイムスリップした女学生がヤズミと出会い、事件解決後、元の世界へ戻れていたとされ、老婆になった時にヤズミの幼い頃と出会っている、と言う、文字にするとややこしいですが、スリルの後、ホッとするお話しです。

美男美女の東宝俳優の中でも、アイドルのような可愛らしさですよね。

円谷プロの初期の作品は、中さんの代表作と言っても過言でない2本があります。

ぼくはこの花粉の季節になると、梶田興治監督との会話を思い出します。

中さんは「変身」でのヒロインでした。梶田さんは、恋人役の中さんと、巨人になった野村浩三さんとの目線の合いがいまだに気になっていると言うので、よく合わせましたねと言うと、子供のような笑顔を見せてくれました。

そしてあのモルフォ蝶の鱗粉やマンモスフラワーの花粉が、本当に皮膚感覚で、ぞわぞわするんですよと付け加えました。

「マンモスフラワー」って太古の生物が現代に甦り、現代人があわてふためくわけですが、近年、人間の勝手で山を丸裸にし無計画な植林をした結果、杉花粉にやられる現実がある。

植物は繁殖して生き残るために必死に花粉を散らす。人間がそれにやられるのは、奢りに対する戒めですから、この花粉、さながら「マンモスフラワー」ですね、と言ったら、顔をくしゃくしゃにされて喜んでくれました。

同じ東宝の助監督出身の、野長瀬三摩地さんの「緑の恐怖」でも、中さんは若奥さん役です。庭に突如出現したチルソナイトを悪戯ぽく靴でこつん、てへペロが可愛い。

妖艶な女性が好みだと思っていた野長瀬監督の趣味の巾は面白いなと思いましたが、さすがにそこは言いませんでしたが、幻想や怪奇のための中さんの可愛らしさでした。

本多監督の「オール怪獣」では、社会現象としての鍵っ子、川崎の工業地帯の空気がただよう世界観で、怪獣よりも困った子供の敵を、あえて怪獣に準えて風刺のようにした時に、絵に書いたような良妻賢母を中さんが演じ、とても東宝的な明るく楽しい1本になった。

結局、子供だったぼくらにとって、先人たちがこの世とをお別れをしていくのを、ただ見守っていく。さようなら、と言いつつ、映画や番組を、あらためて、正座して見直す。感謝の想いをもって。

良い映画、番組を残してくれました。未来の子供たちも楽しむ事でしょう。

画像、ネット上の拾いものです。ご免なさい。