17-11-05 | ヤマダ・マサミ ART&WORK 検:ヤマダマサミ

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主に仕事に関わる、特撮、怪獣がらみのブログです。
ときどき、猫が登場します。

17-11-05

私設特撮居酒屋<特プロ倉庫>で楽しい時間を過ごさせていただきました。席亭の岩崎さん、ありがとうございます。

総勢13人で豪勢なテーブルを囲んでの特撮談義でした。

東宝で長く特撮美術を担当していた井上泰幸さんの姪御さんである東郷さんが参加される事になって、井上さんの思い出話が中心でした。

高校生の時に東宝へ遊びに行って、特美の部屋のダルマストーブを前にうつらうつらしていたおじさんが、若いスタッフに根掘り葉掘り伺っている最中に、ときおり口を挟んでくれたのが井上さんとの最初出会いでした。

それから同人誌を始めて、84年の「ゴジラ」の時は商業誌の取材として東宝へ行き、井上さんと何度か会いました。

縫いぐるみを作る人の仕事は見ての通りなんですが、特撮美術とはなにをするのか? 井上さんの活躍は単に美術の段取りや実務だけでなく、予算と日程の割り出し、そのためのスケッチや取材、調査、打ち合わせまで多岐に亘り、図面や発注、セッティングまでしっかりやります。つまり、撮影が始まるまでの舞台作りです。

あの特撮用大プールや特撮大ステージの設計も井上さんの仕事でした。ぜんぶ理詰めです。頭の良い人で、しかも頑固でした。でも出しゃばりません。晩年の円谷英二が撮影後の集合写真で隣に座らせるのが井上さんでした。

「ゴジラ」が終わり、復活ブームが去ってしまって、ぼくは商業誌をやめて建築模型の会社に入りました。2年以上やりましたが、やめてフリーになった際、横浜博の模型を頼まれて、大がかりなセットがあったため、井上さんにやってもらいました。ぼくは小物の模型を作りました。

その後に、1ヶ月、井上さんの工房、アルファ企画でバイトさせてもらいました。

また商業誌に関わるようになって、今度は経験値も付いたので、改めて井上さんの取材をさせてもらいました。

井上さんは酒飲みなので、飲み始めると雄弁になります。記事の文字校正の際に、修正で真っ赤になりました。これ、直らないかな、これ、ちょっとまずいかな、ここもだ。

井上さん、全取っ替えですね。

編集部はそんなことは赦されません。仕方がないので、私費で版下を特急料金で作ってもらいました。

まぁ、そういう事はふつうはしません。でもなんだか楽しいでした。大変でしたが。それから1つ、井上さんに原稿を頼んだ事もありました。

信頼関係が出来たから書いてもらえたのだと思っています。

あるとき、戦隊シリーズの変形ロボット模型がCGになると言うので、井上さんががっかりしていました。木工の依頼をずっと受けていたので。

「ウルトラマンティガ」の現場で、潜水艦の搬入に来た井上さんとばったり。もう模型作りもだいぶ減った様でした。

ぼくはそれから、ホビー誌の連載を10年やって事と本も何冊か出せた事、特撮のイベントも30回やって、燃え尽き症候群というか、反動ですっかり引きこもり状態になって10年、表に出られなくなりました。

その間に井上夫妻とお別れになりました。

亡くなる2年前に電話で話したのが最後でした。

あることで、井上さんが本当に悔しそうに話された。言葉も出ません。

奥様の個展が終わったら遊びに行く約束でした。それがかないませんでした。

今年の春、井上さんの地元の海老名で井上泰幸展が開催されて出かけました。井上さんの右腕だった高木さんと20年ぶりに会いました。すっかり白髪になられていて。若かったぼくが雨のぬかるみの中、困った顔をしていたのを思い出すよと言って下さった。会場の看板にあった井上さんの顔が、元気でいるのかい、と言っているようでした。

東郷さんの話で、ゴメスの弾丸道路の工事現場のモデルにされたロケハン写真が出て来ましたと聞いて嬉しくなりました。

ゴメスとリトラは、龍と鳳凰なんだよ。なんだか夫婦怪獣のようですね。そう? にんまり笑う井上さんを思い出します。

 

 

岩崎さんとは、プロップ仲間というか、いろいろな側面で共通点があるんです。成田さんが絵を欲しい人はいませんか、と言うので、岩崎さんと上松さん、また別の日に西村さんを連れて行きました。

竹書房「ベストブックウルトラセブン」の特写したウルトラホーク1号は岩崎さんが保存されていたもので、ぼろぼろだったので、ぼくが水平翼やキャノピーを付けました。

若くて世間知らずだった頃です。なにをやっても楽しかった。

みんな終電で帰るんだろうな思っていたら、始発組が半分いたのでそのまま朝までいて、猫たちお腹減らしただろうなと急いで帰りました。

帰りの車中、好い天気で、気持ち良かったです。お疲れ様でした。

楽しい時間でした。ありがとうございます。