ロンドンに六連泊するツアーに参加した。20117月、亡き夫ともに英国旅行をしている。エジンバラを起点に南下しながら湖水地方、ウェールズ、コッツウオルツ、シェークスピアの生まれた街、バース、ストーンヘンジを観光し、夕方、ロンドンに入る旅程であった。ロンドン一日目はバッキンガム宮殿を外から眺め、大英博物館とウィンザー城を見学、最終日午前中にはホテルを発つというものであった。ロンドン二泊とはいえ、何も見ていないという不満が残っていた。ロンドンをじっくり観光するこのツアーは魅力的だった。

 一日目は二階建バスを貸し切っての市内観光である。二階の一番前の席に座ったので市内の景色が良く見える。バッキンガム宮殿に着くと、腰の丈ほどで細長い楕円形仕様の真っ黒なコンクリートの大きな塊が歩道に置かれていた。美観が損なわれるが、歩道を行く人間を標的にしたテロが起こった経験からのテロ対策であった。それ以外は、7年前と変わりない空間が広がっていた。


次に行ったのはダイアナ妃の葬儀が行われたウエストインスター寺院である。前回は車窓から見たにすぎないので、内部見学は嬉しいことだった。真っ赤な造花で飾られた第一次世界大戦戦死者の碑があった。第一次世界大戦の英国の戦死者は888246人である。日本の戦死者の数をろくすっぽ覚えていないのに、このわかりやすい数字ゆえに、他国の戦死者数をあっさりと覚えてしまうことになった。


昼食後、グリニッジ天文台にむかった。テムズ川を見下ろす小高い丘にある。今、世界標準時はグリニッジのものではないと知っているが、昭和の子には忘れられない場所である。観光客の定番、昔の標準時だった子午線をまたぐ写真を撮ったことはいうまでもない。塔の上には大きい赤い玉があった。この赤い玉を落とすことで、テムズ川を航行する船に正確な時間を知らせていたのだという。ニューヨークで新年を迎えるとき、玉が落ちる行事はこれが起源なのだろう。博物館内で展示されている天文の器械は複雑ではない。大らかな感じがして楽しかった。英国が海洋で主導権をとるため、一年間で腕時計を開発したのがグリニッジということで、博物館内には時計の変遷も展示されていた。


ここで私が買った土産は、時計の組み立てキットである。電池式ではなく、透明な文字盤越しに、色とりどりの歯車が次々に動き、そして針が動くのが見える仕様である。6歳以上組立可能という表示がついている。英語を読みつつ組み立てるのは脳トレになりそうである。添乗員から、分解して楽しめますね、というコメントが返ってきた。そういえば時計を分解して遊んでいたクラスメートがいたことを思い出した。これまで時計の分解をしたことはないが、この年齢になって分解して遊ぶのも悪くない。時計組立キットは日本にもありそうだが、グリニッジに来なければ思いつかなかったことだろう。(続く)