今年3月末で全員が後期高齢者になった私たち高校時代の仲間8人は、動けるうちに、というので、社会科見学に精を出している。東京に育ちながらも、東京で行ったことのない場所はたくさんある。有名な庭園などを一通り見た後、細川庭園、丹下健三設計のカトリック教会の東京カセドラル、昨年開園した荻外荘を含む荻窪三庭園、ライト設計の自由学園の明日館を訪れ、最近は、やっと再開の大江戸博物館に行ってきた。このグループの次回は府中競馬場である。仲間の一人であるHさんが死ぬまでにしたいことの一つが「競馬場で競馬を見る」だと言ったからだった。他の7人とも競馬を見たことがなかったので、たちまちに決定した。
Hさんは「死ぬまでにしたいことリスト」を作っている。彼女のリストの一つには相撲の桝席観戦もあった。これは、相撲好き4人で実行済みである。ピアノとフルート上手の彼女の「死ぬまで・・・リスト」には弦楽器にふれることも入っている。これも、音楽好きの一部の参加となるが、来月、横浜にあるヤマハに行き、弦楽器体験をする。
昔、私も桝席観戦を願ったことはあった。競馬中継を見るたびに、緑の芝生と複数の馬を見て美しさを感じたので、行ってみたいと思ったことはある。ピアノとクラリネットを習ったことのある私は、筝を演奏する妹のおかげで弦楽器を体験している。ハープを弾いてみたいと思ったこともあるが、できたら良いな、くらいのものだった。今回、Hさんのおかげで競馬場行が実現することになったが、今のところ、私自身の「死ぬまでにしたいこと」はないと言っていい。
多分、これはマリさんの「したいことリスト」のせいだろう。1995年6月に乳がんで亡くなったマリさんは、病床で32のしたいことを書いていた。その内容は、紀伊国屋に行って本を買いたい、娘二人とケーキを焼きたい、息子とボール遊びをしたい等々、健康ならばできることばかりだった。特に心打たれたのは、娘2人と年が離れて生まれた「息子を元気に育てたい」という部分だった。マリさんのリストを知った私は、子供が成長することを見ることさえできれば、人生はそれで良いのだ、と思い至ることになった。
健康であればできることを目標にして達成を目指すことはないと思ってきたのだが、Hさんの「したいことリスト」を知って、少し考えが変化することになった。見届けることは健康状態が悪くても可能である。しかし、彼女の「したいこと」は元気で活動できる体でなければできない。健康でしたいことをすれば精神的にもいきいきとしていられる。周囲の人たちにも好意的にうけとめてもらえそうだ。達成後の気抜けを心配しなくてはならないが、「したいことリスト」を作り、実行することは「光輝幸麗者」を作り出すことになるのではないかと思い始めている。