神隠しweekend | 季節の横顔

季節の横顔

昭和10年に刊行された祖父の随筆集『季節の横顔』によって,昭和初期という時代に生きた人々の様子,また時代を超えて共通する想いなどについて語るブログとしてスタート。
・・・今では単なるつぶやきノートです。

ずーっと

た~ぴんに満天の星空を見せてやりたいと思っていたのです。


子どもの頃、両親に連れられていった温泉宿で、

夜、母と散歩をした時に見上げた夜空の美しさ!

あんなにたくさんの星があったなんて。

いなか暮らしだった私ですら、感動したものでした。


ましてや、

地方都市とはいえ、街中に住んでいるた~ぴん。

なんとかそんな機会はないものかと

いつも思っている訳です。


そこで今回は県境を越えて、

隣県の山の中にある民家に泊まりに行きました。


文字通りの

山の中の一軒家!


よく、子どもがうるさくしていたりすると、


「ここは“山の中の一軒家”じゃないんだから

静かにしなさいよ」


なんてしかるけれど、

そこはまさに、本当の一軒家だったのです。



高速を下りて、国道をずんずん山の中に向かって進んでいき、

山の中の自然公園に至る細道に入ります。

その途中に目指す宿の看板があり、「ここを右折」。


さらに細い道。対向車が来たらアウト。

おまけに未舗装。


さらに、かなり標高も高くなってきたので、

いきなりの濃霧。

・・・っていうか、下から見たら雲の中になっちゃうんだろうな。

ライトをつけないと不安なくらいの霧なんて、

めったに経験できるもんじゃない。


そして曲がりくねる山道。

運転技術の良し悪しに拘わらず、

絶対に切り返しをしないと曲がれない程の急カーブを超えた先に、

目指すお宿はありました。



   森   森   森   森   森   森   森



江戸時代に藩の御用紙漉として栄えたおうちだそうで、

いまはその家の方々は麓の町に移り住んだため、

その家を宿泊施設と資料館にしているんだそうです。

1日1組限定の貸し切り。

 #食事は自炊だけれど、調理道具や食器もすべて揃っているので、

 #食材と調味料を持っていけばいいだけ。


私たちを出迎えてくれたのは

その家の管理人さん、つまり紙漉商のご子孫の方です。

ふもとの町からやって来て、

約束した到着の時間を待っていて下さいました。

そして管理人さんの飼い犬の「しげちゃん」。

この家の雰囲気にぴったりの日本犬で、

ちょっとビビリ君ですが、遊んでもらうのが大好きというワンちゃんでした。


管理人さん(ご子孫の奥さん)が家の中を案内して下さり、

「お泊まりの人にはサービス」とおっしゃって、

資料館として使っている2階の部屋とお蔵の中を見せて下さいました。


昔風の急な階段を上ると、金属製のシャッターがあり、

その奥が資料展示室。


「えっ?そのシャッターも江戸時代からあるの?」


と、た~ぴんがお約束のジョーク・・・。とほほ。



一通り説明して頂いた後、

管理人さんは、軽トラックの荷台にしげちゃんを乗っけて

ふもとに下りていかれました。


そうなると、この山の中にいるのは私たちだけ・・・・。

なんだか一層霧が濃くなったように感じました。



この家には昭和50年まで住んでおられたということで、

なんだかそこで時間が止まっているような感じでした。

玄関を入ってすぐの部屋には

明治天皇ご夫妻の写真を初め、

いまの天皇陛下&皇后陛下の若かりし頃の写真などが飾られ、

次の間には、

子ども達には「DAIGOのお祖父ちゃん」と言わなきゃわかんないであろう

地元の大物政治家(元総理)がにっかりと笑っている写真がありました。

ご先祖様の写真が掛けられた部屋もあり、

田舎のお祖父ちゃん地に泊まりに行ったような、

そんな昭和の香りがそこらじゅうにただよっています。


玄関のとなりにはお勝手口があって、

広い土間に、流し台とそしてなんと竈!

(もちろん、ガスコンロもちゃんとついてるよ~)

土間を上がると広い板の間で、

真ん中に囲炉裏が切ってあります。

実際に炭をくべて火を焚き、暖を取りました。

山の中なんで、結構冷えたのよね・・・。




   DAIGO   DAIGO   DAIGO   DAIGO   DAIGO   DAIGO   DAIGO




今回は、わが家と

保育園時代からの幼なじみMMちゃん一家、

そして、インターナショナルスクールがお休みの間だけ

た~ぴんのクラスメイトとして地元の小学校に通うHくん一家、

3家族の合同お泊まり企画でした。

子どもはHくんの妹のMIちゃんを入れて4人。

大人はそれぞれの両親で6人。

全部でちょうど10人。

この宿の定員は10人なので、ちょうどぴったりの人数。


Hクンのお父さんはオーストラリア人で、

お仕事の関係でいまは日本にいますが、

来年にはオーストラリアに帰ってしまいます。

それで、それまでの間、たくさん想いで作りをしとかなくちゃというのもあるのでした。


そうそう、た~ぴんとMMちゃんとHクンは今年は同じクラス。

おまけに、同じピアノの先生についているので、

この間のピアノの発表会では3人で連弾した仲なのです。




   ぴあの   ぴあの   ぴあの   ぴあの   ぴあの   ぴあの   ぴあの




お天気は依然として霧の中・・・・。



囲炉裏を見た瞬間、


「あ・・・。ビールというよりも、お酒だったねぇ・・・」


と思ったのですが、

あの山道を下って買い出しに行き、

また戻ってくる時に、もし暗くなっていたら

車ごと落っこちちゃう危険があるのであきらめました。

それが4時半頃。


自炊なので夕食はBBQと決めていました。

 

霧雨から本降りにはならなかったので、

なんとかお庭で焼くことができました。


食べ始めたのが5時半ぐらい。

で、みんなもうおなか一杯・・・というところまで食べたのが

大体7時ぐらいだったかなぁ。


まだ明るいんですよ。


「日本酒を買いに下りようか・・」と言っていた4時半頃と

ほとんど変わらない明るさ。


へ?


「なんかきつねにつままれたみたい」

とMMちゃんのお母さん。


そういえば、あの細道に入った途端、

深い霧に包まれたっけ。


『千と千尋の神隠し』の世界に入っちゃったような気持ちになりました。





   カオナシ   カオナシ   カオナシ   カオナシ   カオナシ   カオナシ   カオナシ





夕食後は花火をしようというスケジュールだったのに、

いつまでたっても暗くならないので、

後片づけをしたあと、いったん家の中に戻りました。


暗くなるのを待つ間、

なぜかその家においてあったジグソーパズルに挑戦。

そうそう、いろんなものがそのまま置いてあったんです。

昔のゲーム機とかガラスの仮面のコミックスとか・・・。


ようやく暗くなってきたので花火大会開始。

大きな袋を持っていったんだけれど、

わりとあっという間になくなっちゃった。


でも、いまのご時世、

こんなふうに歓声やら煙やらを気にせずに花火が出来るなんて、

やっぱり「山の中の一軒家」ならではかも。


しげちゃんとちょっと似ていてビビリ君なた~ぴんは、

「みんな、あぶないから気をつけんといけんよ!」と

小うるさく注意しまくりでしたが、

「よし、最後はみんなで線香花火競争!」と盛り上げてくれました。


いっせーので線香花火に火をつけて、

誰が一番長持ちするかを競うんだそうです。


でも霧雨の中、雲の中ですからねぇ・・。

なかなか火のつかないのもあったりして。


H君の妹のMIちゃん、

自分の持ち分の線香花火が、なんと残念なことに全部火がつかず、

とうとう涙がこぼれちゃいました。


オーストラリアって、花火禁止なんだそうですね。


ごめんね、MIちゃん。

今度絶対リベンジしようね!





   線香花火   線香花火   線香花火   線香花火   線香花火   線香花火   線香花火





花火を終えて、子ども達は寝る時間。

とは言え、こんな日になかなか眠れる訳ないですよね。


昔の大きな家ですから、部屋数は十分にありました。

子ども達はみんな一緒に寝ると言ってきかないので

真ん中の部屋を子ども達の寝室、

周りを囲むように3家族の寝室というふうに部屋割りをしました。


そして子ども達はパジャマに着替えて寝室へ、

大人達は、とろとろ燃える囲炉裏を囲んでおしゃべりtime。


HくんとMMちゃんはわりと早めに眠ったようですが、

た~ぴんとMIちゃんは、なぜか異様に盛り上がっておしゃべりに花が咲き、

大人が眠る頃まで起きていたようです。


でも、たまにはこんな夜があってもいいかなと

大目にみてやることにしました。

翌朝は、ずっと寝ていたっていいんだし。



ところが翌朝早く、ばたんという音。

子どもの寝室からです。

あわてて覗いてみると、

縁側に面した障子が2枚外れて、

1枚は内側に倒れています。

MMちゃんの姿が見えないっ!

びっくりして障子を持ち上げてみると、

何事もなかったかのようにぐっすり眠るMMちゃんの姿が・・・。

キックしちゃったのね。


そんなこんなで

結局子ども達は意外に早く起き出してしまったのでした。




  障子  障子  障子  障子  障子  障子  障子




携帯の電波も届かず、(庭ではOKでした・・)

テレビの局数もわずかという、本当の山の中の一軒家での一夜。

帰り支度を済ませて、管理人さんに電話をしてから

あらためて家の中を見回すと、

ああ、私が生まれた家もこんな感じだったなぁという

なつかしさでいっぱいになりました。


ずっと曇り空で、星空も青空も見えなかったけれど、

アウトドア派じゃない私やMMちゃんのお母さんにとっては

ほどほどに不便でほどほどに便利なキャンプ感覚で

非日常を満喫できました。



しばらくして管理人さんとご主人、

そしてしげちゃんが軽トラックでやって来てくれました。

前日とは違って、ちょっとうちとけた感じのしげちゃんでしたが、

私たちが車に乗り込むと、


「え?なんで?行っちゃうの?えええっ?」


という、

いやほんとに、まさにそんな表情になり、



「おおおお~ん おおおお~ん」と吠えるのです。


わんちゃんのこんな表情は初めて。


後ろ髪を引かれる思いで、

管理人さん、しげちゃんに手を振って山を降りてきました。




  犬  犬  犬  犬  犬  犬  犬




ふもとには小さな温泉町があるので、

そこの共同浴場で温泉タイム。

諸事情により入浴しなかった私とMMちゃんのお母さんと、

お母さんと一緒じゃなきゃイヤと、ちょっと女の子っぽく恥じらうMMちゃんの3人は

近くを散策しました。


季節の横顔-板壁

こんな感じの、ちょっとレトロな板壁の建物を見つけましたよ。




   温泉   温泉   温泉   温泉   温泉   温泉   温泉




その後、共同浴場の隣のお食事処で昼食をとり、

現地解散ということで、

それぞれの家族のペースで帰ってきました。

途中、おねむになったた~ぴん父さんと運転を代わった私ですが、

実はあまり寝ていないので、睡魔の足音が聞こえていました。

でも、頼りになる一人息子のた~ぴんが

私のために、眠いのをガマンして起きていてくれて、

帰る途中、ずっと一生懸命に話しかけてくれるのです。

た~ぴん、あんたは天使だ!


県境を越えた辺りから、空は晴れ渡り、

めっちゃ良い天気になりました。

あーん、今日が昨日なら良かったのにと

ちょっとお天気を恨みながらも、

また今度いつかきっと・・・という想いとともに帰宅。


帰ってみたら、元通りのいつものわが家。

神隠しにされていたような気配も全くなく、

「あーあ、晩ご飯作るの、おっくうだなぁ」と

いきなり現実世界に引き戻されました。


こんなんだったら

2週間ぐらい神隠しにあって、

ブタになっていてもよかったかなぁ・・・なんて思ってみたり。


でもついつい食べ過ぎて

すこしブタっぽくなっちゃったのは、もしかして・・・・???



   ブタ   ブタ   ブタ   ブタ   ブタ   ブタ   ブタ