医師を信頼するということ | 今日もいちにち生きました

今日もいちにち生きました

2016年、直腸癌が再発。
治療の結果、一生の障害を負うことになりました。
2022年胃がん発覚。2023年咽頭がん発覚
3つの癌を抱える今。
以前の私とは生き方が変わりました。
がんと闘い、生き抜くことができた日々。
今日という日をつづります。

今日外来に行ってきました。

元々予定にはなかったのですが
痛み止めが減ってきたのと
先週受けたMRIの結果を聞きたかったからです。

この、予定外の外来、
僕はよく行きます。

特に現在の病院に転院してからしょっちゅうです。
(現在の病院は2院めです)

予約なしでも受け付けてくれるんですが
一応、目的を話しておきたいので
前日に電話をするのが習慣になっています。

先生につながればラッキー。
不在であっても看護師の判断で受け付けてくれます。

しかも、どうぞいらしてください、というような
優しい言葉で。

サービス業とは、職業のカテゴリーではなく
実はこうした個別の人間が生み出すものなんだな
などと考えてしまいました。

何はともあれ、検査結果を一刻も早く聞くため
朝一番で診察室に飛び込みました。

結果は


「縮小してますよ。」



夢に見る程待ち焦れていた言葉でした。

冷静を装ってはいましたが内心では
パリのオペラ座でスポットライトに浮かんだような
万来の拍手を浴びているような
そんな気分でしたよ。

もちろん、実際は狭い診察室におじさんが二人いるだけです。

けれど私は確かにオペラ座のセンターに立ち
私の耳は割れんばかりの拍手を聞いていたんです。

それでも、医師は医師。
くぎを刺すのを忘れません。

「退縮しているけれど理想というところまでは残念ながら届いていない。
でも間違いなくいい方向だと思います。」

残る検査は、24日のCTと来月1日の内視鏡です。

その結果で術式が決定し
すぐに手術入院なると思います。

ストーマのことを考えると相変わらず凹みますが
それでも、この一年間やってきた術前補助化学療法に効果があると
わかれば、喜びの感情の方が遥かに強いですね。


話は痛みの問題に移りました。
お尻の痛み、一時期に比べればずいぶん引きました。
それでもまだ痛み止めは手放せません。

痛みは人間を狂わせます。
判断や感情が正常さとは明らかにずれる。
それがわかるんです。
次第に自分の感じていること自体が信じられなくなってくる。
怖いことだと思いました。

近年の緩和医療の発展は
極めて正しい医療の進むべき方向だと思います。

たとえそれが原因で平均寿命が短くなったとしても
緩和医療は人が人であり続けるための
非常に重要な医療分野だと信じます。

閑話休題

医師は、痛みの源を探るため触診してくれました。
さすがにこれは痛かった。

そりゃそうです。
一番痛いとこがどこかを探るのが目的ですから。

医師曰く
「痛みの出所は肛門というよりもっと奥にありますね。
これじゃいくら軟膏を塗っても効かない訳だ。」

ここで私は告白しました。

「今まで黙ってましたが、実は肛門科クリニックに行ってみてもらったんです。」

痛むところがおかしいと言われたこと。
痔の痛みではないこと。
従って肛門科の範疇ではない。
やるべきことは現在の病院にみて最善策を考えてもらうこと。

主治医の考えはこうです。
痛みが肛門だろうと直腸だろうと手術で切除すれば
痛み自体は根治する訳ですから、とにかく痛み止めでしのぐことを考えましょう。
抗がん剤も放射線も今はやっていない訳ですから、良くなっていくはずです。

その通りでした。
放射線が終わってから一ヶ月近く経ちますが
ここ一週間ほど劇的に痛みが軽減したんです。



がんの罹患が分かって3年近くになります。
合併症もありましたから
ずいぶんといろんな医師と出会いました。

医師も人間ですからいろんな考え方があります。
さらに患者との接し方にも
その人の人となりが出ます。

医療は非常に高度な専門職です。
その医師の腕がいいのかどうかなど
素人の患者には分かりません。

けれど、人間性は分かります。

がん治療は長く険しい道です。
その道ともに歩む医療者に
信頼を寄せることができるかどうか、
それはこれ以上無いと言ってもいいほど
重要な問題だと思います。


初発時、私はステージⅡでした。
再発率は10%程度。
その時の主治医は「治しましょうね」と言ってくれました。

けれど、その後に起きた強烈な排便障害。

そして再発。
しかもその再発は、スケジュールに組まれた検査で発見された訳ではなく
自分の体変調を感じたため
念のため診て欲しいとこちらからお願いして見つかったものです。

そうしたことが重なると、
その主治医をどうしたら信頼できるかが分からなくなります。

だから、私はセカンドオピニオンに回りました。

その中でもっとも信頼のおけそうな先生にその場で決めました。

先ほど、腫瘍の退縮が分かった時、
オペラ座の舞台でスポットライトを浴びたようだと書きましたが
あながち嘘とも言い切れません。
実際それほど舞い上がったんです。
けれどもし、信頼を置いていない医師だったら
そんな気持ちにもなれなかったでしょう。


私のブログのオフ会仲間は
全員が現在進行形のがん闘病者です。

話を聞いていて悲しくなるのは、医師への不信感です。
そしてこの悩みが一番大きい。

無理もないんです。
不信感を抱きながらの治療ほどつらいものありません。

私はそんな仲間たちに声を大にしていいたい。
患者としてなすべき最大のこと、
それはすべてを任せられる医師と出会うことだと。

私にとって今回の放射線は
生まれて以来最悪の痛みでした。

もし、医療スタッフに不信感を持っていたなら
途中でギブアップしていたかもしれません。

やり抜けた一番の原因は
医師の言葉をとにかく信じたからです。
疑念を抱くことをしなかったからです。

治療は今後も長く続くでしょう。
何しろ敵はがんですよ。油断は禁物です。

それでも、不安より安心感の方が大きいのは
現在の医療チームを信頼しているからにほかなりません。

医師を信頼すること。

体を預ける人を信頼すること。

いい治療を受ける為に患者が学ぶべきことを
私はまさに今体験しているのかもしれません。



↓何か感じたらぽちっとね
にほんブログ村 病気ブログ 大腸がんへ
にほんブログ村