「自分に勝つ」
勝つこと
今思うと、ガンになる前にはとことんこだわっていたような気がします。
格闘技が大好きで、プロボクサーになり、必死に仕事をして、すべて他人に勝つためでした。
「どうしてあんなに勝ちにこだわっていたのだろう?」と振り返ってみました。
その答えは「自分の弱さを認めたくない」でした。
幼いころからずっと自分の中には弱い自分がいたのです。
実は小学校低学年まではとっても臆病で気が弱く、よく女の子から泣かされているような子でした。
しかし、小学校4,5年のある時ひょんなことから「自分は本当は強いのでは?」と思えるような出来事があり、周りもそんな目で見るようになったことで自分の中に強い自分と弱い自分が存在するようになったのです。
それからは、弱い自分を隠すために、ずっと強い自分でいることを意識してきたような気がします。
しかしそんな強さは諸刃の剣のようなもので、常に強くあるために頑張り続けなくてはいけませんでした。
そして頑張れば頑張るほど、本当の自分との乖離に苦しむようになり、結果的には鬱になり癌です。
結局は自分が身に付けた鎧の重さに耐えきれなくなったというようなこと。
強さを求めたら最終的には自滅する・・・・
それって、まさに癌細胞そのもののだと思います。
しかし私は幸運にもガンになったことで、弱い自分と向き合えるようになったのです。
大きな手術で何もできない。
サラリーマンを辞めて何もない。
そんな時に強さは何の役にも立たないどころか、誇示していたら生きていくことさえもできなかった・・・
弱い自分を受け入れることで感謝の気持ちも得られることも知りました。
サラリーマンの頃は、強さを求めていたので怒りが多かったことも解りました。
人はみな弱いもの。
弱いから他人の弱いところも許容でき、他人がいなければ生きていけないのです。
スポーツや勝負事ならいざ知らず、他人に勝つとか負けるとかなんてことはどうでも良いことと思えるようになりました。
そしてガンになって解ったことは、「自分に勝つ」ということ。
それは自分の弱い心に勝つということ。
自分の決めたことをやり抜く。
自分に限界を作らない。
自分の意思や意見を貫く。
自分を信じる。
他人と自分の比較で優越をつけるのではなく、自分が少しずつでも前に進んでいれば良いのです。
本当の強さとは勝つとか、負けるとかいうところにはなく、弱さをみとめること。
他人に勝つのではなく、自分に勝つこと。
他人に勝とうと思うと自分以外はすべて敵になりますが、そんな自分に勝てば敵はまったくいなくなります。
そうすれば強いとか、弱いとかは関係なく、敵はいなくなる、即ち無敵になると思います。