タコ部屋生活からみえる人間模様
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意外な一言

野本君と寮に戻ると次の日が日曜という事もあり、みんな酒を飲んでいた。
みんな酒が好きだった。
酒で失敗してる人も多かった。
しかし今日は普通の日より酒が進んでいるのか少しうるさいなと感じた。

まあ寝るかなと思い布団に入ってウトウトしてると野本君の布団からボソッと声が聞こえた。
「うるせえな」

俺は驚いた。
あのおとなしい性格の野本君からは想像できない言葉が確実に隣から聞こえた。
俺は瞬時にヤバいなと思った。

すると案の定酔っ払ったオヤジ2人が野本君に突っかかってきた。

始めての内金、そして・・・

飯場生活を始めてからあっという間に一週間ほどたった。
その間は毎日ガラ出しをした。昔から力や体力だけは自信のあった俺は、新人では使える奴。みたいな感じで職長や先輩にかわいがられてきた。
まあ、若いというのが一番の理由だと思うが。
一週間でいろいろ人と話しをしたがみんな過去の事は聞かないし自分の事もあまりいう人はいなかった。
中には昔はやくざだったとか金持ちだったとかいう人もいたが、大抵はウソに聞こえた。
だが、ほとんどの人がなんかしらの過去をもっていると感じがする人ばかりだ、というのは感じた。
改めて普通の暮らしを送るというのが難しいんだなとも思った。

そして俺はとうとう内金をもらえる土曜日をむかえ、五千円を貰った。
財布にお札が入ったのはかなり久しぶりだった。
俺は野本君と一緒に軽くゲーセンにいき、帰りコンビニで酎ハイを買い、いろいろなくだらん話しをしながら寮に戻った。
彼は本当に素直でいい子だった。
俺はこの生活をもし抜けられても付き合えればいいなと思ったが、その願いは叶わなかった。

働いているという実感

ガラ出しの作業は単純だったが、背の高い俺は狭い足場内を中腰になりながら動き回る事が大変だった。
真冬なのに汗だくになり必死で働いた。
回りの人も最初は「おい」「お前」と呼んでいたが夕方頃には名前で呼んでくれるようになった。
俺はマンションの屋上から工事用エレベーターで下に降りる時、夕日をみてなんか久しぶりに働いた事に満足した気持ちになった。
こうして現場デビュー1日目はあっという間に終わった。
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