もう、これはヤバイ本です。


読んだら、ますます棟方志功さんを好きになってしまいます。


志功さんの自伝『板極道 』も何回も読むほど好きで、

もし無人島に1冊だけ持っていけるとしたら『板極道』しかない!
と思っていたんですが……



この『鬼が来た~棟方志功伝』はそれを上回る本でした。


純粋に志功さんの作品が好きというのもあるんですが、

もう、本人もキャラクターもぶっとんでて情熱的で
青森愛にあふれているので、
志功さんを通してますます青森が好きになってしまいます。




さらに、この『鬼が来た』は同郷(弘前出身)の作家、
長部日出雄さんが書いているので、
青森の視点から見ているところがいいんです!!

志功さんを通して青森を知る本でもありますよ!



志功さんといえば、ゴッホの絵をみて、
「わだばゴッホになる!」と世界的な芸術家を志したといわれますが、
この本では志功さんの人生の転機を、青森の大火にしているところも面白いです。


志功さんて方は、
飛び抜けてポジティブなお方で…

同じ津軽出身者で、その対極にいるのが太宰治(笑) 。



この本の冒頭は、
太宰治と棟方志功が火花をちらす(というか、太宰が一方的に怒っているだけなんですが…)
エピソードからはじまります。

ここ、おもしろいです。
ぜひそこだけでも読んでもらいたいです。


太宰さん、にくめない人です。


●太宰から見た志功さん

「棟方ってやつはね、実はあれでちゃんと計算してやっているんだよ。昆虫みたいな触角を持っていて、だれが自分の味方でだれが敵か知っているんだ。本能のままに振舞っているのなら愛嬌もあるが、計算してやっているんだから、気障でやりきれないよ」 (太宰治)


棟方志功氏の姿は、東京で時折、見かけますが
あんまり颯爽と歩いてゐるので、私はいつでも知らぬ振りをしてゐます。(太宰治)


●志功さんの故郷への思い


「青森市っていいますけれども、ぼくの場合は青森市というより、『北』といい換えたいな。北に生まれたということを、ぼくは誇りにおもっている。いまの日本の文化に、北の逞しい息吹きをふっかけてやりたい。そういう意味で、ぼくは北に憧れ、北を愛するんですよ」


「昔の善知鳥は、よかったですよ。ぼくはどうして善知鳥という地名を、そのまま残しておいてくれなかったのかとおもう。いまの青森はよくなったのか、悪くなったのか判らない……」  棟方は、大火で焼けてしまうまえの青森を、つまり柾葺き屋根の上に石塊を載せた灰色の家のつらなりであって、どこかに寂しい漁村であった昔の善知鳥村の面影を残していた町並みを懐しんでいたのだとおもわれる。


「……それからひとつ、とくに申し上げたいことがあります。私はほうぼうの人とつき合っておりますが、青森県の人は、人のいいところをいわないで、悪いところばかりいう癖があります。だからこの機会に、おたがいによいところを認め合って、悪いところをいわないことにしたらどうでしょう。つまり、おたがい長所を大いに褒めることにして、欠点は絶対にいわないようにする。それがこの会を続けて行く上において、最も大切なことであると私はおもいます」


世界に向かっていく姿勢もかっこいいですが、
帝展に入賞するところは涙なしには読めません。


電子版も買って何度も読み返しているところです。
マーカー部分を読み直すのに便利なのでオススメです。





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