こんにちは、

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帚木蓬生氏の著作

「受命」を読了しました。(二周目)

実在する独裁国家の体制転覆を図る意欲作です。

 

氏はあの国を訪ねたことがあるのでしょうか。

リアルな描写に引き込まれます。

季節の移ろいを言葉で紡ぐなら氏の独壇場です。

精神科医として活躍しつつ、

生殖医療に関する著作もあります。

そのような裏付けにより本作もリアリティがあります。

 

物語は三者による平行展開として描かれます。

・日系ブラジル人で産婦人科医の津村。

・津村の恋人・舞子と、在日朝鮮人の平山会長。

・韓国人の女男、寛順と東源。

 

津村は平壌産院に招聘された医師として、

舞子は面会旅団を率いる平山会長の秘書として入国。

カンスンとトンウォンは実行役として密入国、

同志を探し当て合流します。

 

津村は自身を北朝鮮に招聘したホ・イルホから、

最高指導者の暗殺計画を知らされます。

それに参画してもらいたいという打診です。

そこでホはcalling~受命という言葉を示します。

天からの呼び立てという意味です。

 

宗教観が無い筈なのに、

あたかも神からの啓示として描かれる様に、

信教の自由が無い国への揶揄を感じました。

ホは津村と英語で会話しているので英語から、

神という概念を知っていたのかもしれません。

 

氏の小説は、

四季折々の情景描写が美しいのが特徴です。

淡々と静かな筆致のまま進みます。

 

最終盤、それぞれの一行は元山に会します。

津村と舞子は最高指導者の招待を受けたゲストとして。

寛順と東源はゲリラとして。

 

宴には最高指導者とその異母兄弟も出席しています。

正男、正哲、正恩、与正と思われます。

 

宴の食事には毒が盛られています。

そのことは津村と舞子らには事前に知らされています。

その食事を口にした一族は倒れ、

死に至ったと暗示されます。

 

自国の体制が地獄だと感づいて道を正そうとする人々。

現軍人や退役軍人、医療従事者たち。

変える為なら我が身も呈する覚悟する人々。

これが突破口となり本当に変わっていけばいい。

そう願って戦死した者たちの武勇伝的作品です。

 

作中に登場する食べ物に生唾を飲み込みました。

カンスンとトンウォンが口にする庶民の食べ物。

ホ・イルホの語る母の味…センソンナムル

ヒョン医師の思い出の味…オイソン

津村が語るブラジル料理…シュラスコとムケカ

 

生きることは食べることだと、

あらためて思い知らされます。

 

この作品、文庫本で3cmの厚さがある大作です。

だからなのかあとがきはありません。

或いは目を付けられるのを怖れたのでしょうか。

 

センソンナムルはいずれ再現してみたいと思います。

 

 

献立

真竹の散らし寿司 お揚げ 干椎茸 人参 

 自家栽培明日葉 錦糸卵 刻み海苔 とびこ 

きぬひかり米の酢飯

鰹のたたき おろし生姜 馬路村ぽん酢

若布の澄まし椀

 

 

真竹は孟宗と異なりアクもクセもありません。

なので様々な展開が可能な万能な食材です。

食感を楽しむだけの品と言ったらそれまでですが。

 

されど素材の風味を活かすのならば、

薄味に越したことはありません。

 

 

そうは言っても酢飯に筍だけでは物足りません。

干椎茸 人参 お揚げを甘辛く炊いて併せます。

こうして味のコントラストを設けます。

水煮真竹は薄口醬油にてリンスして用意します。

 

 

 

お付き合いくださりありがとうございます。

能登半島の復興が進みますよう心より願っております。

加油台湾。