遠田潤子氏著作。

 

すっかりとりこになってしまった遠田ワールド。

氏の著作を、

粘着質だと一蹴する、あるいは遠ざける読者が多いのは

想像に難くありません。

 

でも、

そう感じる人はきっと順風満帆な人生を経てきたのかもしれません。

遠田ワールドに触れないよう幸せに暮らしてください。

 

ん?

なんかレビューになってないかも。

 

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

これまで遠田ワールドを遡ってきました。

雪の鉄樹→カラヴィンカ→アンチェルの蝶

それらの物語構成に共通項をいくつか認めました。

 

・過去の出来事がつまびらかにされることで、

現在の不明点が明らかになり焦点が見えてくる。

 

・主人公の父親が異端な存在である。

 

・主人公は独り者の男性。

 

・そんな主人公にも人生を左右させる女性がいたということ。

 

・鉄樹とアンチェルの主人公は大阪が舞台なのに標準語を貫く。

そのうえ後遺症持ち。

 

・背景を支える植物の存在

蘇鉄 藤 枝豆

 

・音楽の存在

ヴァイオリン ヴォカリーズとギター ドヴォルザーク9番

 

・主人公は代代わりしたかする者として描かれるが、

天涯孤独である。

 

カレル アンチェル/チェコフィルハーモニー/ドヴォルザーク交響曲第9番

https://www.youtube.com/watch?v=mpaDf9JAi_o

 

普段なら現代のデジタル高音質を求めるのですが、

演奏の質の高さに於いてアンチェルは心に沁みます。

 

「遠き山に日は落ちて」

スコアではなく音を聞いて暗譜するのはアナログです。

映画「オケ老人」でも同じ手法がされていました。

 

籐太と秋雄は、

どうしようもない甲斐性無しの自分の父親を殺します。

それはいづみも解放するはずだったのに、

いづみは坪内という男につきまとわれることになってしまいます。

 

坪内のいづみ依存症も呆れるほどです。

そんな男の子供を産んだのは、

分身を残したいといういづみの遺志ではなかったでしょうか。

坪内である必要は無かったし、

籐太との思い出の場所で微笑んだのがいづみの最期の抵抗だったのでしょう。

秋雄はいづみを殺したのは自分だと吐露しますが、

いづみは自ら死を選んだんだと思います。

 

残された者に試練を課すのも氏の残酷です。

雅雪が舞子と遼平を、多聞が実菓子を、籐太はほづみを、

見捨てられないのですから。