マハラジャの魅力
インドの話。
ウダイプールの街は美しいレイクパレスホテルで有名だけど、そのホテルの中を見たことのある市民はごく限られているはず。ボートでしかホテルには入れないし、その船着場にはもうホテルの係員がいて、「不審者は絶対入れないぞ!」とがんばっているから。市民は湖に浮かぶ白いパレスをごみごみした下町から眺めるのみ。このホテル、パレスというぐらいだから当然元々はウダイプールのマハラジャのお城。マハラジャさんが「今日はちょっと暑いな~。湖の上で寝たい。」と思ったらすぐ行けるように建てられている。よって、自分ち、つまりメインのパレスから目と鼻の先。ホテルのバルコニーから本家が思いっきり見える。
「湖の近くに家があるんだから、十分涼しいだろ!」と庶民の私は思うんだけど、違うらしい。おまけにこの人、別宅ひとつじゃ足りなくて近所に後二つか三つ建てている。
砂漠の暑さを耐えながら僅かな賃金の為に働いていた人達にとってはさぞ腹立たしかったでしょう。まあ、これも昔の話。今では市民も、観光地となった故郷のお城に来る金持ち外国人相手に商売して、中に入れなかろうと大して気にはしていない。
ところで、このマハラジャさんちの子孫はどうしているかというと、実は知り合いがマブダチでお互いお呼ばれしたりされたりしている。で、この子孫さん、今ロンドンにウン十億の家があり、アンティークショップもSotheby'sの近くにあり、気が向くと本家に帰ってきたり世界中にある別送に泊まったり。そんなことをしながらも、ホテルとして使わせてるパレスの権利金が毎年がっぽがっぽ入ってくるという、羨ま悔しい生活をしている。
日本でいえば戦国武将の子孫が街中にいくつもすごい地所を持ち、おまけに世界中にも家があって、そんなすごい金持ちだもんだから、地元で武将まんじゅうや戦国そばとか作っちゃって観光客とか見に来ちゃう。といった感じでしょうか。
人間自分よりもちょっと幸福な人は憎たらしいけど、あまりに桁外れだと逆に地元だっていうだけで嬉しくなっちゃうもんですよね。ウダイプールの市民にマハラジャさんのことを聞くと、「ものすごいビジネスマンだ!」「世界有数の金持ちだ!」「彼の先祖は優秀なマハラジャで、イギリス人に負けなかった。」と嬉しげに話してくれます。例え彼らの住んでる村がマハラジャの家より小さくてもそんなことはいいんです。何度も何度もおうちが砂嵐で埋もれそうになっても、綺麗なレイクパレスが月の明かりで光ってるのをみれば、疲れが吹き飛ぶんです。マハラジャの魅力って偉大なんです。

