
1990年発表。
単行本1冊、321ページ
読んだ期間:3.5日
「銀河ヒッチハイク・ガイド」のダグラス・アダムスと動物学者のマーク・カーワディンが、世界各地の絶滅危惧種の動物を訪ねたノン・フィクションが本書。
序文を書いたリチャード・ドーキンスは世界的に有名な進化生物学者。
本書が発表されたのは今から20年ほど前の1990年なので、当時絶滅が危惧されていた動物のいくつかを訪ねたわけで、現在とは多少、状況が変わり、改善されてきたも種もあれば本当に絶滅して(そう思われる)種もいます。
訪ねた動植物たちは以下の通り。
①アイアイ
②コモドオオトカゲ
③マウンテンゴリラ
④キタシロサイ
⑤カカポ
⑥ヨウスコウカワイルカ
⑦ロドリゲスオオコウモリ
⑧モーリシャスチョウゲンボウ
⑨ラムス・マニア(コーヒーノキ)
これらの動植物だけでなく間、間で他の動植物も見て回っています。
最後の⑨ラムス・マニアだけ植物で、当時世界で1本しか残っていない超々希少種。
あのダグラス・アダムスが書いてるだけに、堅苦しい本になるわけがなく、アダムスらしい斜に構えたユーモアあふれる文章で書かれており、思わずクスッと笑える事、確実です。
たとえばこんなの↓
◆アイアイは夜行性だから、昼間のアポはとれない
◆毒ヘビ研究家が語るヘビ毒検出キットの話「ヘビに咬まれたかどうか調べるわけじゃありませんよ。咬まれて気づかない人はめったにいませんから。」
◆マウンテンゴリラに会いにザイールに行ったときパン屋でスリにあった話「パン屋の店主が状況(あなたはスリにあったんですよ)を説明してくれたが、わたしのザイール・フランス語の力では理解できず、てっきりぶどうパンを勧めているんだと思って6つも買ってしまった。」
◆同じくマウンテンゴリラに会いに行った時に、ホテルに荷物を置いてくるのを忘れて、大量の洗濯物・スーツ・コンピュータ雑誌・同意語反意語辞典・ディケンズ全集の半分・木彫りのコモドオオトカゲまで山の上まで持って行くはめになった話。
◆カカポに会いにニュージーランドに行った時の話「空港でザイールから来たと言ったところ、ブーツを持っていかれ、数分後に戻って来たらブーツは消毒薬でピカピカに洗われていた。今度ブーツをきれいにしたいならニュージーランドに来ようと思った。」
◆ヨウスコウカワイルカに会いに中国に行った時、揚子江の水中が如何にやかましいかを録音するためにマイクにかぶせるコンドームを現地で入手しようとしてスッタモンダした話。
他にもたくさん笑える話が満載です。
数行に1つはアダムスらしいひねくれた表現が出てきます。
そのせいで文字数が増えてしまっている事は確実ですが、これこそがアダムス流。
そして、ユーモアだけではなく、人間以外の自然が如何に危機的状況にあるかを辛辣に綴ってもいます。
今回取り上げられた動植物については改善の兆しが見えるものが多いとはいえ(現在の状況が欄外に追記されています)、⑥ヨウスコウカワイルカについては絶滅したらしい。
他にもさまざまな種が絶滅の危機に瀕しています。
そう言った問題提起も本書の目的であり、読み応えのある本であり、なぜ20年も邦訳されなかったのか不思議です。
動物好きな人、「銀河ヒッチハイク・ガイド」が好きな人はぜひ読んでください。