$アルバレスのブログ

1985年発表。
文庫1冊、441ページ
読んだ期間:4日


[あらすじ]
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今では人類を数千年も凌駕する文明を確立し、外宇宙進出も果たしたチーラ人の協力を得て、ドラゴン・スレイヤー号の5人による「竜の卵」の調査はすべて完了した。
後は母船セント・ジョージ号への帰還を無事に果たすのみ。
そんな時、中性子星の強大な重力からドラゴン・スレイヤー号を守るための6つの潮汐力補償体の1つが故障。
ドラゴン・スレイヤー号は崩壊の危機を迎えた。
残された時間はわずか5分。
しかし地球人類の5分はチーラ人にとっては10年あまりの期間に相当する。
チーラ人たちはかつては神とあがめた人類の救出を果たす。

しかし、そのチーラ人たちにとても最悪な事態が巻き起こる。
中性子星全土を揺るがす巨大な地殻震=<星震>が発生。
地表の建物は全て倒壊し、さらには加熱された大気は10億度ともなり、地表に住む生き物すべてを完膚なきまでに叩きのめした。
生き残ったのは地下に作業者や科学者、グライダーで飛んでいた芸能人のクウィ=クウィ、そして宇宙を探検していた宇宙軍軍人などの300名足らずとなってしまった。

チーラ人たちは生き残ったわずかな者たちと協力し、文明再興を目指す…

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重力工学を扱う物理学者でもある作家、ロバート・L・フォワードが描くスーパーハードSF「竜の卵」の完全続編が本書「スタークエイク」

どのくらい続編かと言うと、本書は「竜の卵」終幕のちょっと前から始まってそのまま時系列が続いて行く、と言うほどつながってます。

わたしが「竜の卵」を読んでから2年ちょっと経つので、そこそこ忘れていました。
なので本書を読んでて「あぁ、そういえばこんな設定だったな」と思い出す楽しみもあり、かなり有意義な読書体験でした。

とりあえずここで設定をちょっとおさらいしてみますと、

「卵」とチーラ人が呼んでいる中性子星は直径20キロ足らずでありながら表面重力が地球の670億倍、東西を貫く磁場は1兆ガウス。
そこに住むチーラ人はナメクジの目のような6対の目を持つアメーバ状の知的生命体で、直径5ミリ、高さ0.5ミリのゴマ粒大の大きさながら体重70キロを有し、人類の100万倍のスピードで世代を重ね驚異的な進化を果たす。
また、体に致命的な損傷を受けた際に特殊な酵素により鉱物植物に変態する事があり、年を経て再び動物体に戻る事もある。
かつては人類を神とあがめ、人類からの情報提供により進化を加速させたが、今ではその人類を遥かに凌駕する科学技術を持ち、人類を<のろい連中>と呼ぶ。

物理的な裏付けについては「竜の卵」や本書の専門的補遺に譲りますが、こう言った事をベースに本書を読んで行くと大変わかりやすく楽しめるんではないかと。

裏表紙のあらすじに書いてある、ドラゴン・スレイヤー号の危機は前半の150ページくらいであっさり解決します。
本書のテーマはあくまで星震とそのあとのチーラ人再興。
やはり、チーラ人の生態が非常に面白い。
職業や状況を基にしたネーミングがされるとか(なのでキャラの状況が変わった段階で同じチーラ人が全くの別名に変わったりする)、人間のような視覚、聴覚で無く、味覚・嗅覚で会話をするとか、回生と言う生まれ変わりが出来るとか、その上人間以上に人間っぽい性格をしているとか、非常に魅力的な生命体として登場します。
登場人物はかなりの多さになります。
何と言ってもあっと言う間に世代を重ねて行くので、どんどん新しいキャラが登場します。
回生を重ねて何世代も生き続けるキャラもあります。
ラストにはさらに変化したチーラ人が登場。
人類救済に全生涯を捧げるチーラ人が出て来ますが、彼の生涯には胸が熱くなります。
このシリーズ、日本でアニメ化してくれないかと思います。
萌えキャラは全く出て来ませんが(^^;

著者が物理学者と言う事もあり、かなり高度な物理法則が出てきますし、本書では限定的なタイムマシンまでも登場します。
理屈を理解するのはかなりのハードルにはなりますが、なんとなく分かったつもりで読んでても面白く読めます。

残念なのはフォワード作品のほとんどが絶版で古本でしか読めない事。
本書「スタークエイク」も中古購入でした。
とりあえず「竜の卵」の方は普通に買えるのでこちらをまず読んでみる事をオススメします。
やっぱり本書よりも面白い。
チーラ人の進化の過程が読める「竜の卵」はSFファンなら必読だと思います。