スティーグ・ラーソン「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」 | アルバレスのブログ

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最近はガンプラとかをちょこちょこ作ってます。ヘタなりに(^^)

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2005年発表。
文庫2冊、875ページ
読んだ期間:6日


[あらすじ]
経済ジャーナリストで雑誌「ミレニアム」の発行人でもある、ミカエル・ブルムクヴィストは窮地に陥っていた。
現在のスウェーデンの大物実業家ハンス=エリック・ヴェンネルストレムに対する違法行為を暴露したものの、絶対の自信を持って「ミレニアム」に掲載した記事の元になった情報が根も葉もないものである事が発覚、名誉棄損で訴えられ完敗を喫してしまった。
ジャーナリストとしての信頼を失ったミカエルは、「ミレニアム」の発行人の職を辞し、収監を待つ身となった。
そんな中、ミカエルの元にある依頼が舞い込む。
依頼元はかつてスウェーデンで一大勢力を誇った企業、ヴァンゲル・グループの元会長、ヘンリック・ヴァンゲル。
依頼とは、ヘンリックの姪で、36年前に失踪したハリエット・ヴァンゲルがどうなっているのかを調査してほしいと言うものだった。
ヘンリックとしては、ハリエットは身内に殺されていると確信し、長年徹底した調査をしていたものの進展せず、老い先短い自分の寿命の事を考慮し、第3者の目を通して何らかの発見ができないものかとわずかな可能性に掛けてみたかった。
何も発見できなくてもいいから調査してもらいたいとの依頼だが、警察でも探偵でもない一介のジャーナリストであるミカエルは乗り気がしなかったが、調査の報酬の一つとして、仇敵ヴェンネルストレムに一矢報いる情報を与えると言われ、しぶしぶ調査に乗り出す。
しかし、36年も前の出来事の再調査は中々進展しない。
ところがミカエルは今まで見過ごされていたある事実を偶然にも発見。
それは、この失踪事件がヴァンゲル家にまつわる未解決の連続殺人事件との密接なつながりだった。
自分一人ではこれ以上の捜査が難しいと判断したミカエルは、ある凄腕リサーチャーを紹介される。
その名はリスベット・サランデル。
身長150cm、体重40kgの痩せすぎの体。
ピアスと背中には大きなドラゴンのタトゥー。
25歳にして15歳くらいにしか見えない幼さ。
奇抜なファッションに他を寄せ付けない雰囲気をまとう女性リサーチャー。
ミカエルはリスベットの協力を得て、事件の真相に迫って行くが…


3部作で全世界6000万部と言う驚異の売り上げを記録し、映画化もされた超人気ミステリーが去年の年末に文庫化。
今まで本棚に寝かせて熟成させていた本シリーズをついに読み始めました。
まずは第1部「ドラゴン・タトゥーの女」


上巻は良くありがちな状況説明が中心なため、物語の進展はあまりありません。
主役2人=ミカエルとリスベットの人物像にヴァンゲル家とその家系に連なる人物たちの過去と現在、ハリエット失踪事件の詳細な説明に未解決の連続殺人事件がつながって行きます。
こういう説明編は退屈になりがちですが、本書ではそこもかなり面白い。
主役2人の魅力(特にリスベットの特異性)もさる事ながら、ヴァンゲル家の人々の、ある意味異常性が際立っています。
変人ばかりです。
これがまた面白いんですが、ヴァンゲルの姓を持つ登場人物がかなりの数、出てくるので、最初の内は誰が誰だか良く分からないと言う難点でもあります。

下巻に入ると、ミカエルの新発見により事件が急展開して行きます。
そしてそれまで平行線をたどっていた主役2人がついに出会い、行動を共にし始めます。
社交性に富み女性にもてるタイプのミカエルと、社会不適合者として成人ながらも後見人が必要とされているリスベット。
この対象的なキャラ設定が本書の魅力の一つ。
カメラのような記憶力と一見しただけでものの構造が分かってしまう特殊能力を持つリスベットがやはり突出しています。

ミステリー的には、ほとんど定番の流れになっており、いかにも怪しくなさそうな人が犯人だったり、ハリエットが実は○○だったり(上巻で触れられている話ですが)と言う展開は、上巻を読み始めればミステリー好きにはすぐわかると思われますが、それでも本書は面白い。

ハリエット失踪事件を追う調査は、ノンキャリの刑事が足で地道に稼ぐようなローテク捜査。
下巻終盤で、ミカエルを失墜させたヴェンネルストレムへの徹底的な反撃は最新IT技術を使ったハイテクと言う対比も面白い。
ミカエルが執筆したヴェンネルストレムの裏側を描いた「マフィアの銀行家」と言う書籍を是非読んでみたいくらい(あくまで架空の本ですが)。
実に痛快は反撃が行われますが、痛快すぎてヴェンネルストレムがちょっとかわいそうになるくらい(^^;
このヴェンネルストレムと言う人物はいわゆる金融屋で、日本でもちょっと前に問題になった虚業の王。
著者はミカエルの口を借りて、今の世界の金融を取り巻く状況を痛烈に批判しています。
「株式市場とは現実ではなく幻想であり株価の暴落などどうでもいい。こういう虚業家がはびこる原因はマスコミにある」と。
また、本シリーズのもう一つのテーマは虐げられし者たちへの救済。
特に女性の性差別や性犯罪に対する厳しい警鐘でもあります。
本書に登場する女性キャラが被る被害には目を覆うものがあります。
この部分は第2部につながっていく伏線になっています。

著者のスティーグ・ラーソンは本書がデビュー作。
あまりの売れ行きに気を良くしたラーソンは最終的には全10部作にする構想だったそうですが、第4部執筆を開始したところで50歳の若さで急死。
世界のミステリー界は計り知れない損失をしました。
SF読みのわたしとしては、オリジナル長編2作を発表したところで急逝した伊藤計畫氏を思い出す…


本書は本国スウェーデンで全3部が映画化され、最近ではハリウッドで第1部が映画化されました。
そこでちょっとおまけで、それぞれのキャスティングを比べてみます。

まずはスウェーデン版↓
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左がミカエル役のミカエル・ニクヴィスト、右がリスベット役のノオミ・ラパス。

一方、ハリウッド版↓
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左がミカエル役のダニエル・クレイグ、右がリスベット役のルーニー・マーラ。


どうですかね~。
個人的には両方ともミカエルがワイルド過ぎな気がしますけど。
リスベットは難しいですね。
小柄で子供にしか見えないと言うだけでもキャスティングが難しそう。
いっそのこと15歳の子役にやらせればとも思いますが明らかに18禁なシーンが多そうなんで無理だろうし。
ちなみに、わたしは映画は両方とも観てませんけど(^^;

で、わたしが勝手にキャスティングしてみました↓
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ミカエルにはサイモン・ベイカー、リスベットにはレイシー・シャベールをあててみました。
ミカエルは正義感溢れる信念を持った不屈のジャーナリストと言う一面に加え、閉鎖的と思われる田舎の農夫も警戒感無く迎え入れる優しさを持った上に女性にもてる男性と言うキャラなので、映画版とは逆にやさ男にしてみました。
サイモン・ベイカーは「プラダを着た悪魔」などに出ているオーストラリア人俳優で、年齢的にも40歳ちょっとなので合う。
レイシー・シャベールは「ロスト・イン・スペース」などで子役として活躍していた女優。
この写真も「ロスト・イン・スペース」からの1シーンです。
今は30歳過ぎで十分育っていますが、雰囲気は近い気がします。
本書の読書中はこの2人の顔が頭に浮かんでしょうがなかった。
人それぞれ印象が違うと思いますので、異論があるのは承知です。


とにかく本書は面白かった。
その上、大変読みやすく、900ページ弱を6日で読んだのは初めて。
今、第2部上巻を半分ほど読んだところなので、読み終わったらまたレビューします(^^)