ダグラス・アダムス「ほとんど無害」 | アルバレスのブログ

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1992年発表。
文庫1冊、371ページ
読んだ期間:3日


[あらすじ]
イギリスでキャスターをしているトリシア・マクミランはニューヨークで大手TV局のキャスターになるため面接に向かうものの失敗。
うまく行かない人生を振り返ると17年前のあの時を思い返す。
ある仮装パーティーで、二つ頭の仮装をした自称宇宙人のある男から「一緒に宇宙に行こう」と誘われながらもたもたしている間に男は消えてしまった。
空を見上げると一つの光が天空を飛び去って行った。
あれは本当に宇宙人だったのではないか。
いつか迎えに来てくれるのではないか。
そんな事を思い続けていたある日、庭に宇宙船が着陸。
あの男ではなかったものの宇宙人との接触と言う一大スクープに惹かれトリシアは宇宙に飛び立った…

フォードが久しぶりに「銀河ヒッチハイク・ガイド」社に戻ると、そこは彼の知っている「ガイド」社ではなくなっていた。
ある会社に買収されていた「ガイド」社は、酒とおふざけに満ちたお気楽な会社から利益追求型の理路整然とした企業に変貌。
「ガイド」も改定され全く別物に変わろうとしていた。
新生「ガイド」社の防犯員に追われたフォードは「ガイド」の改訂版を見つけそれを奪いビルから飛び降りた…

アーサーはフェンチャーチと言う恋人を得て宇宙旅行に旅立ったが、不幸な事故によりフェンチャーチは行方不明に。
失意のアーサーはフェンチャーチを求めて地球型の惑星を転々とするが彼女は見つからない。
安住の地を求めたアーサーの行きついた先は地球とよく似た環境のある惑星。
宇宙船が墜落したためそこに住みつく事にしたアーサーは、地元住民とのふれあいの中、サンドイッチ職人として名声を得ていた。
そんな時、トリリアンが不意に訪れた。
彼女は少女を連れていた。
そしてトリリアンが衝撃の告白をする。
「これはあなたの子なのよ」…


ついに完結となる本作は今までのシリーズと大きく趣の異なる異色作と言うか問題作になってます。
発表当時は「こんなの”銀河ヒッチハイク・ガイド”じゃない」とかなり騒がれたようですが、その意見も全く理解できる内容。
全般的に暗い雰囲気に包まれ、ハチャメチャ度とか騒がしさはかなり影をひそめ、停滞や整然と言う言葉が浮かびます。
主要登場人物は過去に囚われていて後ろ向きだったり達観していたり、アーサーの子のランダムは情緒不安定で行動がおかしい。
そして衝撃のラスト。
これを書いたとはアダムスはかなり思い切りましたね。
(一応オチは書かないでおきます)

ただ、物語的には良くできていると思います。
トリシア、フォード、アーサーがそれぞれの目的を持って行動し、それが徐々に1つにまとまって行く過程で過去の伏線が顔を出して行く構成は、シリーズを読んでいる者にとっては、なるほどここをこうつなげていくのかと感心するし、なにより読ませどころが巧み。
小説的にはシリーズ中最高の出来ではないかと言う気がする。

平行宇宙と時間の混乱ぶりとか無制限知覚と言う神にも似た能力を持った新生「ガイド」とかSF考証にあまり深くとらわれないトンデモ理論は相変わらずですし、いきなり現れるザ・キング=エルビス・プレスリーとかも意表を付いてて面白い。

アーサーに殺され続けている男が予言したスタヴロミュラ・ベータが何なのか、そして1作目で地球を消滅させたヴォゴン人の船長、プロステトニック・ヴォゴン・シュルツが現れるラスト。

色々と意見はあると思いますがダグラス・アダムスが生み出したこのシリーズは一度一通り読んでみる事をお勧めします。
もう彼が本シリーズの続編を書く事はありません。
それが残念ですね。
(追記:タイトルの「ほとんど無害」は「ガイド」第1版で地球について説明された一文だったりする)