1953年発表。
文庫1冊、415ページ
読んだ期間:3日


[あらすじ]
80億人もの過剰な人口を抱えた地球人は、いくつかのドーム都市の中に閉じこもり細々と暮らしていた。
25年前、かつて地球から飛び出し、宇宙での生活を選んだ宇宙人たちが地球に来襲し、今は彼らの支配を受ける状態に陥っていた。
ニューヨーク・シティの刑事ベイリはある日、友人でもある上司のエンダービイ本部長から呼び出しを受け、ある事件の捜査を命令される。
それは宇宙市で発生した宇宙人惨殺事件の捜査だった。
宇宙人は捜査にあたり一つの条件を出していた。
それは宇宙人側の捜査官との共同捜査だった。
ベイリはその人物に会いに宇宙市に出向くが、その人物、R.ダニールとは人間そっくりに作られたロボットだった…

本書はアシモフのロボット長編シリーズの第1作目にあたる作品。
実はアシモフ小説を読むのはこれが初めてです。

本書の初めから20ページのつかみの部分がホントに絶妙です。
何の説明も無くいきなり本題に入り、「何?何?」と読み進めていくうち「あぁ、なるほど」とひざを打つ気持ちよさがこの短さの中にしっかり詰め込まれています。
この冒頭部分で本書の印象が一気に好印象になる、実にうまい書き出しです。
アシモフと言うのは実に達者な作家だと言う事がわかります。

舞台となる地球は、あらすじでも書いたように増えすぎた80億人もの人口を小さなドーム都市(鋼鉄都市)の中で窮屈に育て養う、閉塞感と停滞感満載の状況に陥っています。
宇宙人は、かつての同胞の綱渡りの状況を強制的にでも打開させようとしてやって来ます。
その方法がロボットをサポートとした宇宙移民。
しかし、地球人は宇宙人の超然とした姿勢とロボットに職を奪われる恐怖から宇宙人とロボットに反発。
昔の地球に戻ろうという過激な懐古主義思想に傾倒した人々が暗躍しています。

そこに降って沸いたような宇宙人殺害事件に取り組むのは、自身、ロボットを毛嫌いしているベイリ。
しかも相棒は宇宙人側が用意した人間そっくりのロボット、ダニール。

この設定、まさに「ロボット刑事」の世界。
まぁ、「ロボット刑事」は外見からロボットロボットしてますけど。
性格がものすごくおとなしく気が小さく極端なマザコンと言う大変変わった性格設定になっているのも特徴。
下のOPで「ロボット刑事 K~」と歌っているのでかなり長い間、タイトルは「ロボット刑事 K」だと思っていた。


まぁ、そんな事は置いといて本題へ。
やはりロボット3原則の考案者、アシモフのロボット小説なんだから面白く無いわけは無いですね。
本書はSFを舞台にした推理小説ではありますが、SF部分もしっかりしており、古臭さは全く感じられません。
60年ほど昔の小説にも関わらず、「これはちょっと?」と思える箇所が全く無い。
冒頭部分でコンタクトレンズが出てくるあたり先見の明凄いなと関心しました。
後、本書は何度か改訂もしてあると思われるので、それもあってか大変読みやすかった。
まるで最近の新作小説を読んでるような錯覚を抱きました。

1点残念だったが、わたしの読書のクセからくるミス。
わたしはまず最初に解説・あとがきを読んで事前にある程度の基礎知識を頭に入れてから本編に入るという読み方を良くしますが、本書の場合、あとがきの中に真犯人につながる最大のヒントがちゃっかり書かれているので、謎解きの醍醐味がかなり危うくなってしまいました。
わたしは普段、ミステリーは読まないのですが、さすがのわたしでも「あれ、これ犯人?」と最初の方で気づいてしまいます。
しかし、アシモフの凄いところは、それを見越したかのように、読者を混乱させる仕掛けを駆使しているところ。
主人公のベイリに2度にわたり大失敗の推理をさせて真犯人を煙に巻いてしまっています。
アシモフはSF作家であると同時に、ミステリー作家でもあり、「黒後家蜘蛛の会」シリーズのような有名作品もある。
わたしのミステリー好きの古い友人からも何度も面白いから読めと薦められました。
(結局読んでないですが)
そのSF作家とミステリー作家の2つの部分が見事に昇華した作品になってます。

残念ながら続編3作品が絶版らしく中々手に入りにくい事。
全部絶版ではないようですが、間が手に入らないとシリーズとしては厳しい。
何とかならないもんでしょうかね。
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