
2009年発表。
単行本1冊、361ページ
読んだ期間:3日
[あらすじ]
ある時目覚めると、アンディはゾンビになっていた。
居眠り運転の末、同乗の妻と共に死亡したはずが、アンディだけが蘇ってしまった。
アンディは両親の家に引き取られるが、父は彼を認めず毛嫌いし、母だけが彼をまだ自分の子供として接してくれていた。
ただ、彼の匂いや崩れた見掛けについては母親も敬遠していたが。
アンディは事故のため、左半身が不自由で喉も損傷していたため叫び声くらいしか出せなかった。
そのため、コミュニケーションには首から吊るしたホワイトボードを使った。
彼は定期的にゾンビのためのサポート・グループに参加し、ゾンビ仲間との交流を図っていた。
そんな生活の中、彼は自分が生きていた頃と今の状況のあまりの差に気づいていく。
そして彼はゾンビにも尊厳のある生き方が必要だと言うことにたどり着いた。
そして彼は人間達にゾンビの権利を主張しようと立ち上がる!
ゾンビ。
それは永遠の謎。
ゾンビ。
それは人間の進化の果て。
ゾンビ。
それはいつかはたどり着きたいはるかなる夢…
なんて事を考える人はかなりのゾンビマニアな人でしょう(^^)
いつかはなりたい存在とはとてもいえないものですが、いつまで経ってもどこかで話題になる存在。
そのイメージを決定付けたのはジョージ・A・ロメロの1968年の映画「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」でしょう。
腐敗した体をゆっくりゆっくり引きずりながらひたすらに生者の肉を求めるその姿は強烈な印象を与えてくれました。
ゾンビが他のモンスターと違い、これだけ愛されて(?)来たのはそのユーモラスでゆったりとした動きでは無いでしょうか?
たとえ襲われてもがんばって走っていれば逃げられる。
そんな心の余裕が彼らをある程度受け入れる事が出来る素地を与えた気がします。
しかし、そんなゾンビも徐々に進化します。
1985年の「死霊のえじき」では人間性の残ったゾンビが登場。
同じ年の「バタリアン」ではコミカルながら全速力で追いかけてくる事が可能になったゾンビが登場。
走るだけでは逃げられなくなりました。
2002年の「28日後…」ではこの全速力ゾンビが大勢で襲い掛かって来ると言うとんでもない恐怖に直面。
そうかと思えば2004年の「ショーン・オブ・ザ・デッド」のようにコミカルなゾンビ映画も多々作られ、
2006年の「ゾンビーノ」に至っては日常生活の中でゾンビを召使いのように扱うものも登場。
とにかくゾンビものは途切れる事無く映像世界の中心であり続けているわけです。
そんな中、本書は登場しました。
この世界ではゾンビは当たり前のように生活の中に存在しています。
死者の内、ゾンビとして蘇る確立は1/200。
ゾンビたちはたいていは動物と同じように扱われ、研究材料(人体腐敗のメカニズムや自動車事故のダミ人形代わり)や動物園のように見世物にされたり、虐待され2度目の死を与えられたりしています。
運の良いゾンビは親族に引き取られます。
本書の主人公、アンディも運の良いほうのゾンビ。
ただ、父親からは息子は死んだ、おまえは息子じゃないという扱いをされ、地下のワイン倉に半監禁状態に置かれています。
愛する妻は普通に死んで土の下。
一人娘アニーには会いたくても会えない。
そんな彼の救いはサポート・グループに参加している美しい女性ゾンビ、リタの存在。
徐々に彼女に惹かれて行くアンディ。
ゾンビだって恋もするし笑いもする。
人間と違うのは体だけ。
ゾンビ前とゾンビ後で精神は変わっていない(ゾンビと言う事を受け入れたという点では変わっています)。
こう言ったゾンビの日常と心情を淡々と語る一人称小説が本書です。
ゾンビが好きな人なら楽しめる事間違いなし。
ゾンビが嫌いな人にはゾンビの新しい側面を見つける光明となる一冊。
ちなみに帯にあるように本書は映画化が決まっているそうで、今上がっているキャストには、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットとスカーレット・ヨハンソンの名前が…
(ちょっと眉唾ですが(^^;)
ではお二人の写真を上げておきます。


出来ればホントに映画化してもらいたいですね。