1974年発表。英国SF協会賞受賞。
文庫1冊、425ページ
読んだ期間:4日
[あらすじ]
全7層からなる巨大な木造建造物、地球市に住むヘルワードは650マイルの年齢に達し成人となった。
そして、地球市の運営管理を一手に担うギルドの一員として見習い修行を始めた。
地球市は最適線と言われる、常に北に移動している場所を目指して年36.5マイルずつ進む移動都市。
移動にはレールを使うが、使い終わったレールを回収し、先のレールにつなげていく必要があり、その作業を行うための人手として、原住民を雇い、架線を行っている。
地球市では圧倒的に女性が少なく、生まれてくる子供の割合もほとんど男の子のため、原住民の女性を雇い、子供を生んでもらっている。
ヘルワードは見習いとして初めて都市の外に出るが、そこで見た太陽や月は、都市で習ったものとは違い、ゆがんだ円盤状をしていた。
都市の外で多くの事を学んでいくヘルワード。
ある時、都市での契約を終え村に戻る原住民の女性達を送り届ける任務に就いたヘルワードは、都市の進む方向とは逆の南=過去へと旅をし、不思議な体験をする。
南では土地が伸びて行き、その限界点では説明できない何らかの力で体が引っ張られていく。
旅を終えたヘルワードが都市に戻ると、都市は原住民からの攻撃にあっていた…
前回読んだアルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」に引き続き、古典の部類に入る40年近く前の作品。
プリーストは今回初めてでした。
本書は全5部構成で、1~3部があらすじで書いた内容とほぼ同じ、謎の惑星上に存在する謎の都市、地球市とそこに住む人々の紹介といった箇所。
年ではなくマイルで時間を表現したり、都市の進む方向で過去・未来が決まるとか、その方向に行っている時間(距離)が長ければ長いほど時間の影響を受けるとか、ゆがんだ太陽など、この場所・この惑星がいったいどんな物理法則に則っているのか、そこに住む人間の極端な男女比率のゆがみの理由など、色々と謎の部分が出てきます。
第4部ではそれまで全く登場していない外部の女性エリザベスから見た地球市とヘルワードなど都市に住む人々の観察が入り、ここから第5部にかけて、それまでの謎の一端が解明されていく構成。
1~3部は中々に面白い展開です。
見たことも聞いたことも無い不思議な世界が展開され、地球市市民のどちらかというと古風な生活ぶりが描かれます。
未来的な生活ではなく、中世のような印象で、考え方や行動様式も古風なもの。
ルールに縛られていながら現場ではわりとフレキシブル。
懐かしさも感じられるような生活風景があります。
そして移動都市、地球市。
なんとなく、「ハウルの動く城」が脳裏に浮かびますが、中央部には原子炉がある(と言われている)巨大都市がレールの上をガタガタ進んでいく姿を思い浮かべると、壮大感が味わえます。
主人公のヘルワードは、登場当初は子供っぽさが抜けない若者ですが、時間の壁を破る第3部のあたりから急激に大人になります。
このあたりのメリハリの利かせ方は中々良いです。
いきなり雰囲気の変わる第4部を差し挟むあたりもアクセントが利いてて良い。
ただし残念なのが、この世界に広がる数々の謎があまり解明されずに終わってしまう事。
少しだけ出てくる地球に起こった「大崩壊」というものが何だったのかとか、地球市を取り巻く数々の謎の原因とか、一番知りたいところがサラっと流れて行ってしまう。
1~3部まででしっかりと書き込んでいた勢いが4部からは力が抜けてしまったような感じです。
このあたりもっとがんばってもらえたらさらに良い作品になっただろうにと、ちょっと残念ですね。
とは言え、書かれた時代を考えれば、相当に衝撃的な作品だったろう事は想像に難くない。
プリーストと言えば代表作は「奇術師」(2006年の映外「プレステージ」の原作)なんで、こちらはどうでしょうか?
時間があれば読んでみたいと思います。

文庫1冊、425ページ
読んだ期間:4日
[あらすじ]
全7層からなる巨大な木造建造物、地球市に住むヘルワードは650マイルの年齢に達し成人となった。
そして、地球市の運営管理を一手に担うギルドの一員として見習い修行を始めた。
地球市は最適線と言われる、常に北に移動している場所を目指して年36.5マイルずつ進む移動都市。
移動にはレールを使うが、使い終わったレールを回収し、先のレールにつなげていく必要があり、その作業を行うための人手として、原住民を雇い、架線を行っている。
地球市では圧倒的に女性が少なく、生まれてくる子供の割合もほとんど男の子のため、原住民の女性を雇い、子供を生んでもらっている。
ヘルワードは見習いとして初めて都市の外に出るが、そこで見た太陽や月は、都市で習ったものとは違い、ゆがんだ円盤状をしていた。
都市の外で多くの事を学んでいくヘルワード。
ある時、都市での契約を終え村に戻る原住民の女性達を送り届ける任務に就いたヘルワードは、都市の進む方向とは逆の南=過去へと旅をし、不思議な体験をする。
南では土地が伸びて行き、その限界点では説明できない何らかの力で体が引っ張られていく。
旅を終えたヘルワードが都市に戻ると、都市は原住民からの攻撃にあっていた…
前回読んだアルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」に引き続き、古典の部類に入る40年近く前の作品。
プリーストは今回初めてでした。
本書は全5部構成で、1~3部があらすじで書いた内容とほぼ同じ、謎の惑星上に存在する謎の都市、地球市とそこに住む人々の紹介といった箇所。
年ではなくマイルで時間を表現したり、都市の進む方向で過去・未来が決まるとか、その方向に行っている時間(距離)が長ければ長いほど時間の影響を受けるとか、ゆがんだ太陽など、この場所・この惑星がいったいどんな物理法則に則っているのか、そこに住む人間の極端な男女比率のゆがみの理由など、色々と謎の部分が出てきます。
第4部ではそれまで全く登場していない外部の女性エリザベスから見た地球市とヘルワードなど都市に住む人々の観察が入り、ここから第5部にかけて、それまでの謎の一端が解明されていく構成。
1~3部は中々に面白い展開です。
見たことも聞いたことも無い不思議な世界が展開され、地球市市民のどちらかというと古風な生活ぶりが描かれます。
未来的な生活ではなく、中世のような印象で、考え方や行動様式も古風なもの。
ルールに縛られていながら現場ではわりとフレキシブル。
懐かしさも感じられるような生活風景があります。
そして移動都市、地球市。
なんとなく、「ハウルの動く城」が脳裏に浮かびますが、中央部には原子炉がある(と言われている)巨大都市がレールの上をガタガタ進んでいく姿を思い浮かべると、壮大感が味わえます。
主人公のヘルワードは、登場当初は子供っぽさが抜けない若者ですが、時間の壁を破る第3部のあたりから急激に大人になります。
このあたりのメリハリの利かせ方は中々良いです。
いきなり雰囲気の変わる第4部を差し挟むあたりもアクセントが利いてて良い。
ただし残念なのが、この世界に広がる数々の謎があまり解明されずに終わってしまう事。
少しだけ出てくる地球に起こった「大崩壊」というものが何だったのかとか、地球市を取り巻く数々の謎の原因とか、一番知りたいところがサラっと流れて行ってしまう。
1~3部まででしっかりと書き込んでいた勢いが4部からは力が抜けてしまったような感じです。
このあたりもっとがんばってもらえたらさらに良い作品になっただろうにと、ちょっと残念ですね。
とは言え、書かれた時代を考えれば、相当に衝撃的な作品だったろう事は想像に難くない。
プリーストと言えば代表作は「奇術師」(2006年の映外「プレステージ」の原作)なんで、こちらはどうでしょうか?
時間があれば読んでみたいと思います。
