1982年発表。
文庫1冊、346ページ
読んだ期間:2日
[あらすじ]
自身の不倫から夫婦関係が悪化したデイヴィッド・クーパーは思い出のハネムーンの地、ローガンビーチで妻エレンとの関係修復を図ろうと、ある別荘にやって来た。
その夜、デイヴィッドは一人の娘に出会う。
マリアンナと名乗るその美しさに惹かれるデイヴィッド。
翌日、アリアンナとの再会を果たしたデイヴィッドはいけないと思いつつも、誘われるまま彼女との関係を持ってしまう。
後ろめたさと、理由のわからない体調不良とが重なり妻との関係も一進一退のまま。
そんなデイヴィッドの元に、現地で知り合った初老の女性、ミセス・ブレントウッドが訪れある事を告げる。
「マリアンナという女性に会っていないか?彼女は地縛霊で、目的はセックスだけ。早くこの別荘から離れないと自滅する。」と…
リチャード・マシスンはアメリカの有名な小説家・脚本家で、過去には映画化された「アイ・アム・レジェンド」や「ヘルハウス」の原作を書き、スピルバーグの「激突!」でも脚本を担当、他にも関係した作品としては「ミステリーゾーン」「コンバット!」「スター・トレック」「愛人関係」「夜の訪問者」、最近では「運命のボタン」など非常に影響力のある作家だそうですが、
わたしは今まで1冊も彼の作品を読んだ事はありませんでした。
本作「アースバウンド-地縛霊-」は実は1970年代後半に書かれた作品ですが、編集者が勝手に原稿を編集したため、怒ったマシスンは自身の名前を出すことを拒否。
その後、正式版が出版される事になったといういわくつきの作品です。
内容はと言うと、女性関係で失敗した中年男が色情霊に取り憑かれる話なので、ほぼ全編に渡ってセックスシーンが登場します。
最初読んだ時、こういうシーンが多いのはこの作家のクセなのかと思いました(^^;
ただ、そのシーンは艶っぽいものではなくグロテスクな印象。
事が終わった後の異常なまでの疲労感と渇き。
常に凍える寒さの呪われた別荘。
妻エレンとのぎこちない関係。
これが交互に繰り返し描かれ、読む側もグズグズとした不安感に包まれます。
そしてデイヴィッドがマリアンナの正体に気づいた後の激しい展開はかなりの迫力。
言ってしまうとネタバレになるんで申し訳ないんですが、妻のエレンがマリアンナに取り憑かれた後の変貌振りはすさまじい。
書かれた年代が1970年代後半という事で、当時のオカルトブームにも乗っかったため、自身の著書の「ヘルハウス」や映画「エクソシスト」なんかの影響も見られる、というか取り込んだと言った方がいいのかも。
ちなみに本書の映画化の話が90年代後半にあり、相手はあのロジャー・コーマンだったそうですが、あまりに安く叩かれたので激怒してご破算になったとか。
