2006年作品。

文庫2冊、646ページ

読んだ期間:3.5日




[あらすじ]

かつては”マシーン”と呼ばれ、マフィアの間でも伝説となっていた凄腕の殺し屋、フランク・マシアーノ。

マフィアから足を洗い、釣り人相手の釣餌屋やその他副業を営みながら、悠々自適の生活を送っていた彼だったが、かつてのボスの息子に泣きつかれ、ある件に話をつけるために向かった先でいきなり命を奪われそうになる。

からくも難を逃れ、相手を返り討ちにしたフランクは、過去の自分を振り返り、自分が殺されなければならない理由を探る。

しかし、自分にはその理由が山ほど思いつく。

一体、何がこの事態を招いたのか?

フランクはただ一人、その謎を探るが…




圧倒的な暴力と筆力で「このミステリーがすごい!2010年海外編第1位」に輝いた、前作「犬の力」の作者、ドン・ウィンズロウの邦訳最新作の登場です。




今回の主役は伝説の殺し屋フランキー・マシーン。

マフィアを引退し、60歳を超えたマシーンが、いきなり命を狙われた理由を、自分の過去を遡りながら解明していくという謎解きバイオレンスアクション。

現在と過去を交互に行き来しながら徐々に真相に近づいていくという構成になってます。

始まって80ページまでは、フランクの現在の生活ぶりが詳細に説明されます。

ゆったりとした、几帳面な生活ぶりが描かれた後、急激に暴力の世界に足を踏み入れるという急展開ぶり。

信じていたはずのかつての仲間や友人たちが次々と裏切っていくマフィアの世界の非常さと、そんな中でも自分の力だけでそれを乗り越えていくフランクの強靭さの描写はさすがにウィンズロウです。




とは言え、どうしても前作「犬の力」と比べてしまうと、小ぶりと言うか小ぢんまりしているという印象が残ります。

「犬の力」は何人かの主人公を配したスケールの大きな話だったのに比べ、こちらはフランキーを中心としたものなので、しょうがないとは思いますが…

また、老境に入った男が孤軍奮闘、自分の力だけで逆境を切り開いてく姿はスティーヴン・ハンター著、「極大射程」の主人公、ボブ・リー・スワガーを髣髴とさせます(フランキーも元狙撃手という設定)が、小説のレベルを考えると、残念ながら「極大射程」が圧倒的に面白いです。




あと、これは作品の質の問題ではなく、出版の仕方の話になりますが、やたらと活字が大きく、1ページの行数も少ないので、紙面の文字密度が極端に低くなっており、このせいで上下2巻の646ページ、1470円(税込み)になっている。

「犬の力」の活字と行数で本書を出版したら、せいぜい550ページで1巻1000円くらいになるはずで、出版社側の商売が関係してるようにしか思えない。

ちょっとこれはどうなんだろうと思うんですよ、角川さん?

(老眼の人でも見やすいようにという配慮?)




ちなみに「犬の力」の後書きで、本作はロバート・デ・ニーロ主演で映画化が決定し、既に撮影中との情報が書かれていたので、フランキーの姿がデ・ニーロにしか見えないです。

まさに、デ・ニーロにうってつけの役どころだと思います。

さきほど書いたように、ボリュームはそれほどではないので、映画化するにはちょうどいいサイズだと思います。

映画は凄く期待できます。







帯の「このミステリーがすごい!第1位」は前作「犬の力」の方です(^^;

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