1996年発表。

文庫1冊、605ページ

読んだ期間:4日




[あらすじ]

前作「ドラキュラ紀元」から30年。

英国を追われたドラキュラはヨーロッパを巡りドイツにたどり着き、ドイツ皇帝からの信頼を得て首相兼軍最高司令官に就任。

第一次大戦の引き金を引く。

一方、かつて英国からのドラキュラ追放の中心にいたチャールズ・ボウルガードは齢60を越え、ディオゲネス・クラブの闇内閣の中心メンバーの一人となる。

彼は来たるべきドイツ大攻勢の先鞭となるかもしれない、マランボワ城とドイツ第一戦闘航空団(JG1)の秘密を探るため、一人の男を連合軍コンドル飛行隊へ送り込む。

任を受けたエドウィン・ウィンスロップ中尉は、マランボワ城調査の飛行隊に同行するが、JG1を率いる撃墜王リヒトホーフェン男爵のフライング・サーカス隊の襲撃に遭い、重症を負う。

復讐に燃えるウィンスロップはリヒトホーフェン男爵撃墜を誓う。

そんな中、ドラキュラは陣頭指揮を取るために、新たに司令部となったマランボワ城に赴任する。

遂に、ドイツ大攻勢が始まるのか?

マランボワ城とドイツ第一戦闘航空団(JG1)の秘密とは何か?

ウィンスロップとリヒトホーフェン男爵との戦いの帰趨は?

ボウルガードは愛する者たちを守れるのか?




本作の時代は1918年。

史実では第一次大戦終結の年にあたります。

本書ラストはまさにその真っ只中の雌雄を決する大混乱の戦場が舞台になります。




本書では前作「ドラキュラ紀元」のように割とはっきりした3人の主人公という設定ではなく、連合軍側、ドイツ側の主要人物が入り乱れて物語が進んでいくという手法を取っています。

ドラキュラ自体は前作同様、前面には出てきませんが、全編通して圧倒的な存在感を示す怪物として君臨しています。

舞台が英国からヨーロッパ全体に広がっている関係で、若干散漫な印象はありますが、今回の目玉は吸血鬼の変身能力の不気味さ。

異常なまでの再生能力や人体改変能力の細かな描写が際立っています。

また、戦争を主題としていますので、不死者となった者たちの死生観の描写も中々考えさせられます。




本書の特徴であるゲストキャラ達は、前作とは代わり第一次大戦を扱った戦争小説や映画などからが中心になっているため、ちょっとその辺りの知識不足なわたしにはなじめない人が多かった。

ただ、戦争ものが好きな人にはパっと思いつくキャラが満載なのでは?

そういう意味では予備知識が必要な小説になっていますが、本書でも巻末には登場人物一覧がありますので安心です。




この後、続編として「ドラキュラ崩御」という作品があります。

こちらは今回活躍の無かったジュヌヴィエーヴも出てくるっぽいし、さらにはボンド中佐といういかにもあのスパイ映画の主人公のような名前の人物が登場する上に、このタイトルなので俄然興味が沸きますが、残念ながら絶版なので中古でしか手に入りません。

しかもアマゾンでも3000円からのプレミアが付いてます。

何とかならないものか…

これで終わるのは中途半端過ぎだなぁ…




では、前回のブログでも書いていた登場人物一覧を以下に羅列します。

わたしの興味を持ったものに絞り込みました。

(カッコ内はそのキャラの出自)




[吸血鬼]




エリオット・スペンサー大尉…ディオゲネス・クラブと連合軍コンドル飛行隊の前任連絡役。精神に異常を来たし、自分の爪を自分の脳に突き刺した。(「ヘル・レイザー」のピンヘッドの人間時の姿)




ダニエル・ドレイヴォット軍曹…前作より引き続き登場。ディオゲネス・クラブの一員としてウィンスロップ中尉のボディ・ガードとなる。




ジェイムズ・オールブライト大尉…連合軍コンドル飛行隊の一員。マランボワ城への偵察飛行からの帰還時に撃墜王リヒトホーフェン男爵により撃墜される。(アメリカのラジオドラマの主人公、キャプテン・ミッドナイト)




ルスヴン卿…前作から引き続き登場。英首相。




ウィンストン・チャーチル…英国軍需大臣(史実通り)。




ドラキュラ伯爵…前作から引き続き登場。イギリス追放後、ヨーロッパに渡りドイツで首相兼軍最高司令官に就任。第一次大戦を引き起こす。




マンフレート・フォン・リヒトーホフェン男爵…ドイツ軍の撃墜王。フライング・サーカス隊隊長。(第一次大戦で最高の80機撃墜のスコアを上げたエースパイロット)




エドガー・ポオ…撃墜王リヒトホーフェン男爵の自伝のゴーストライターを勤める。(アメリカの詩人、小説家)




カルンシュタイン将軍…ドイツ第一戦闘航空団(JG1)司令官。(映画「吸血鬼カーミラ」の主人公カーミラの父親)




ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング…リヒトホーフェン飛行中隊記録将校。(ナチス・ドイツの空軍総司令官・元帥)




マタ・ハリ…ゲルトルート・ゼーレ。スパイ容疑でボウルガードにより逮捕され処刑されるが、その前にボウルガードにマランボワ城の秘密を打ち明ける。




ケイト・リード…前作から引き続き登場。ジャーナリストとしてボウルガードと彼の配下のウィンスロップ中尉が探っているマランボワ城の謎を探る。




イゾルド…強力な再生能力を持つ女性長命者。首を切断されても10年で体を再生させたと言われる。現在は、自身の生皮を剥ぐショーを行っている。(日本未公開の吸血鬼映画の登場人物)




[人間]




チャールズ・ボウルガード…前作から引き続き登場。60歳を過ぎ、ディオゲネス・クラブの闇の内閣の中心メンバーの一人となる。マランボワ城とドイツ第一戦闘航空団(JG1)の秘密を探る。




エドウィン・ウィンスロップ中尉…本作主人公の一人。スペンサー大尉の代わりにディオゲネス・クラブと連合軍コンドル飛行隊の連絡役に就く。




モロー博士…前作から引き続き登場。前線の救護所で医療活動を行う傍らアンデッドの研究を行う。(「モロー博士の島」の主人公)




ハーバート・ウェスト…モロー博士の助手。(H.P.ラヴクラフトの「死体蘇生者」=映画「ZOMBIO 死霊のしたたり」の主人公)




[ちょっと不明]




カリガリ博士…ドイツ第一戦闘航空団付き精神科医。(映画「カリガリ博士」の主人公)




テン・ブリンケン教授…ドイツ第一戦闘航空団(JG1)に所属し、アンデッドの変身能力を研究している。(H.H.エーヴェルスの「アルラウネ」に登場するマッド・サイエンティスト)




フリッツ・ハールマン…リヒトホーフェン男爵の従者。(実在の殺人鬼で通称「ハノーバーの吸血鬼」。被害者は20人とも50人とも言われる)




ペーター・キュルテン…リヒトホーフェン男爵の従者。(実在の殺人鬼で通称「デュッセルドルフの吸血鬼」。被害者は20人以上と言われる)






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