1985年発表。世界幻想文学大賞受賞。
文庫1冊、416ページ
読んだ期間:3.5日
[あらすじ]
1977年。
詩人のロバート・ルーザックは、インドのカルカッタに向けて出発する。
目的は、8年前に死んだと思われていたインドの詩人M.ダースの新作の受け取りとダース本人に会うこと。
本当にダースは生きているのか?
もし生きているなら何故姿を消したのか?
眉唾物の情報だとは思いながらもたどり着いたカルカッタは、西洋人にとっては正に異邦の国。
そんな中、ガイド役のクリシュナが連れて来たムクタナンダジが語る内容は、にわかに信じられないものだった。
インドの古代女神、カーリーを崇拝する集団カーリーパカの儀式により、水死体だったダースが生き返ったんだと…
ダン・シモンズの処女長編小説です。
いきなり世界幻想文学大賞という大きな賞を受賞するあたり、さすがはシモンズ。
「ハイペリオン」でも詩が重要なファクターになってましたが、ここでも詩は重要な要素。
とは言え詩心のないわたしにとってはなじみの無い題材のため、中々理解はしづらいところ。
さらにインドという国も近いようで遠い国。
ただ、宗教的には日本とは非常に緊密な間柄なのと、神話好きなわたしには「カーリー」という女神も割と知ってるような(気がする)存在です。
ちなみに「カーリー」とは「時間」や「黒」を意味する女神で、4本の腕には三叉戟、剣や生首を持ち、生首のネックレスをし、腰には切り取った腕がぶら下がるという、とてつもなく血なまぐさい暗黒神という様相。
インド神話では、善神のシヴァ神軍とそれに対抗する魔神たちとの間で長い間戦いが続いており、神妃ドゥルガーが参戦するにあたり、その怒りの具現化した神がカーリーになったという事で、こんな姿になってるそうです。
日本で言う鬼子母神ですね。
(学研のエソテリカ事典シリーズ⑤「世界の神々の事典」より)
そもそもインド神話に出てくる神々はかなり変わったものが多く(ゾウの顔してるのもいますし)、血なまぐさいものも多い。
北欧神話に近い気もしますけど。
そして舞台となるカルカッタはインドの西端にある巨大都市で2010年現在で1500万人以上の人口があるそうで。
ただ、物語当時はインディラ・ガンジーの失脚という大きな政変の只中にあった場所。
雑多・混乱・貧困・熱暑・暴力・汚濁・死と言ったマイナス要素と、活気・発展・進歩・未来と言ったプラス要素が渾然一体となった、まさに幻想的な大都市の様相。
また、本書の冒頭ではカルカッタに対する徹底的な否定の文章が出てきますが、主人公のロバートが言いたかった事は何なのか、
そこまでに至った経験とは何なのかを探る楽しみも本書の醍醐味でしょう。
ロバートは一体何に遭遇し、何を失い、何を得たのか?
哀しみと憎しみと怒りと絶望と後悔の果てに現れるのは果たして何なのか?
世界幻想文学大賞を受賞するだけはある不思議な物語です。
(ずいぶんまとまりの無い感想ですいません(^^;)
