執筆:1307~1321年頃?
文庫1冊、509ページ
読んだ期間:3.5日
前回の「地獄篇」の続きで今回は「煉獄篇」です。
<煉獄の構造>
煉獄の山は7つの還道からなる構造。
ダンテが巡る順に、
①煉獄の浜辺
②煉獄前地:生前の改悛が遅かった者の待合所
③煉獄の門(サン・ピエトロの門)
④第一の還道:高慢の罪を浄める
⑤第二の還道:嫉妬の罪を浄める
⑥第三の還道:怒りの罪を浄める
⑦第四の還道:怠惰の罪を浄める
⑧第五の還道:貪欲の罪を浄める
⑨第六の還道:大食の罪を浄める
⑩第七の還道:色欲の罪を浄める
⑪地上楽園
となります。
ダンテとウェルギリウスはここを3日ちょっとで巡ります。
煉獄に落ちる者は、生前に改悛した者たちで、煉獄の山を巡る還道を登りながら罪を浄め、最終的には天国に昇ります。
罰はありますが救われる人たちです。
煉獄の山は険しい山ですが、地獄と違い、聖歌の聞こえるゆったりとした雰囲気の漂う世界になっています。
ここで罪を浄める魂たちはダンテ一行に逢うと色々と話しかけ、彼が現世に帰った後、自分たちの事を人々に話し、祈ってくれるように頼みます。
このような祈りの多い魂は早く浄められる事になっているからです。
天使たちも数多く現れ、魂たちを先導したり、悪魔の誘惑を追い払ったりしています。
ダンテは額に7つの”P”を刻まれます(7つの罪の意)。
それぞれの還道を登るたびにこれは一つずつ消されて行き、徐々に体が軽くなっていきます。
④では、岩を背負いながら罪を浄めます。
⑤では、まぶたを縫いつけられます。
⑥では、暗く曇った空気の中を歩かされます。
⑦では、ダンテとウェリギリウスは愛について語り合います。
⑧では、感覚的快楽の権化、セイレンが現れます。
ここでは、地面に顔を埋められる罰が与えられています。
また、旅の同行者が一人増えます(スタティウス)。
⑨では、亡者たちは骨と皮の痩せさらばえた姿となっています。
⑩では、猛火の中に入れられます。
⑪では、それまでダンテを導いて来たウェルギリウスとの別れがあります。
時に厳しく時に優しく、ダンテを叱咤激励しながら地獄と煉獄を連れ立って歩いてきたウェルギリウスですが、ここを最後に姿を見せなくなります。
そして、十二使徒のルカやパウロを伴いながら、グリフィンに引かれた輦(くるま)の上に、遂に憧れのベアトリーチェが現れます。
しかし、彼女はダンテに対して、10年間の怠惰な生活について激しい叱責を与えます。
これを聞いたダンテは思わず失神してしまいます。
レテ川で悪い記憶を洗い流したダンテに対して、やっとベアトリーチェは笑顔を向けます。
こうしてダンテはベアトリーチェに導かれながら天国へと昇ります。
「地獄篇」に比べるとあっさりとしたまとめですが、「煉獄篇」では哲学的な考察が増えて来ます。
信仰や愛、生きるとは何かと言った内容が語られます。
詩的表現も増えて来て、「地獄篇」よりは分かりづらくなって来ます。
ダンテが生きていた当時の世相を反映した比喩が多く現れるので、予備知識がないと分かりません。
ただ、注釈がしっかりありますのでそれで補い、理解しながら読んでいく事ができますので安心してください。
ここでウェルギリウスとはお別れです。
ダンテはウェルギリウスに頼り切っており、まるで小さな子供が父親の後をくっついて歩いているような感じ。
それがふと振り返るといなくなっているという、ちょっとあっさりとした別れになっています。
代わりに現れるベアトリーチェはいきなり激怒モードで登場なので、ちょっと意表をつかれます。
ベアトリーチェにとっては可愛さ余って憎さ百倍って感じでしょうか?
「あんた一体なにやってんのよ!」と怒鳴りつけられてるようですが、彼女は現世ではダンテと結婚していたわけでもなく、あくまでダンテの憧れの人でした。
ダンテはしかられたかったのかも。
ちょっとMっ気があるのか?
