1977年発表

文庫2冊、862ページ

読んだ期間:7日




[あらすじ]

ロッキー山脈のふもとにたたずむ由緒あるホテル「景観荘(オーバールック)ホテル」。

冬の間は雪のため閉館となるこのホテルに、管理人としてトランス一家が住み込む。

父親のジャック、母親のウェンディと5歳の息子のダニーの3人。

ジャックはある事件で教師を辞め、かねてからの希望だった劇作家として執筆にあたろうとこの仕事についた。

一時期、ジャックの飲酒癖から離婚の危機を迎えていた夫婦だったが、この一冬の生活で夫婦の絆、家族愛の修復をしようとしていたが、息子ダニーは持ち前の類まれなる霊感で、このホテルでの生活に大きな不安を感じていた。

歴史的な大雪に見舞われ、ホテルは完全に白い壁に閉ざされるが、その時、遂にこの家族は驚愕の惨劇に見舞われる!




あえてあらすじを書くことはないかなぁと思うほど、キング作品の中でも超有名な本作。

映画なら多くの人が観たでしょう。

わたしもそうです。

キングの映像化作品はかなりの数に上りますが、キング自身を満足させる作品はほとんどない状態。

そんな中でこの作品の映像化版は映画的には名作とされていますが、やはりキングを満足させることはかなわなかった。

それはなぜか?を知りたくなって、読んでみました。




出てくるキャラは映画も原作も同じ。

若干印象が違うところもあります。

トランス一家は息子が5歳という若い夫婦(30前後)なので、映画で父親を演じたジャック・ニコルソンは撮影当時43歳くらいなのでちょっと歳とりすぎ。

原作の印象とも異なります。

母親役のシェリー・デュヴァルは年齢的には近いですが、原作ではブロンドの美人なので、これも異なります。

息子役のダニー・ロイドは、まぁ合ってます。




以下は原作の設定。




父親ジャックは、英語教師をしていましたが、若い頃からの飲酒癖でアル中になっていました。

しかし、ある事をきっかけにそれをピタっとやめましたが、学校で彼に逆恨みしていたある生徒が、彼の車のタイヤをパンクさせているのを見つけて激昂し、生徒を半殺しにしてしまい、教師をやめる事になります。

職を奪われ、生活に苦しくなったジャックにとっては最後の希望が劇作家として本を出版し、再び教職に戻る事。

それを果たすためのラストチャンスがオーバールックホテルでの管理人職だったのです。




母親のウェンディは自分の母親との確執が心の重荷になっています。

また、息子ダニーが全てにおいて父親ジャックを優先的に考えている事に嫉妬を感じています。

ジャックがかつて酔っ払って家に帰って来た時、3歳のダニーがジャックの書斎で遊び、書類を散らかしていたのに腹を立て、ダニーの腕を折った事がありましたが、それがどうしても許せないと密かに思っています。




息子のダニーは、本書の中心に位置します。

彼は予知、テレパシーを持った能力者です。

彼の心の友人で実在しないトニーという少し年上の少年から、この先起こるであろう出来事を垣間見る事ができます。

ダニーは終始、オーバールックホテルへの滞在は嫌だと思っていますが、両親の状況も分かっているため反対できずにいます。




他の重要な登場人物としたは、オーバールックホテルの料理担当の黒人男性、ハローラン。

彼は、ダニーを一目みて彼の能力に気づきます。

ハローラン自身も能力者だったのです。

彼は自分達の能力を”かがやき”と表現しています。

ダニーの”かがやき”は、ハローランが見た中でも最強だと、ダニーに説きます。

「何か困った事があったら、頭の中でわたしを呼びなさい。わたしにはそれが聞こえるから」

ダニーにとって唯一の協力者がハローランというわけです。




原作ではこの一家3人を中心にハローランを含めて話が進みます。

映画では閉鎖空間での超常現象から徐々に狂っていくジャックと母子が中心で、ホテル自体は入れ物的な扱いですが、原作ではホテルこそが狂気の原因、まさに幽霊屋敷物語となっています。




徐々におかしくなるジャック、ジャックを不審に思いながらも頼らざるを得ないウェンディ、近い将来起こるであろう惨劇を予感しながらも父親を愛するダニー。

このあたりの書き込みの深さが、原作の醍醐味の一つとなっています。

後半の緊迫感とスピード感も見事。

ド派手なラストもいい。

何があっても父親を愛するダニーのけなげさに泣けます。

ちょっと気になるのが翻訳。

マイルやインチはまぁ我慢しますが、華氏は摂氏に直して欲しかった。




「映画では」としつこく言いましたが、映画も別の作品と思えば名作だと思います。

映画の方は、ジャック・ニコルソン主演のスタンリー・キューブリック映画になっているので原作うんぬうんを問うのが間違っているかも知れません。

まぁ、そんなこと言ったらキングは気分悪いでしょうが(^^;




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左側の生垣で作った動物は映画には出てこないですが、原作では非常に重要。












では、このあとは原作にはない映画のシーン集を。

ネタバレなので気を付けて。
























































原作にはこういう生垣迷路はありません。

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なので、こういう追跡シーンもありません。

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こんなショックシーンもありません。

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この子たちが出てくるシーンもありません。

前任の管理人が殺した娘(姉妹)はいますけど。

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この原稿のシーンもなし。

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この超有名なシーンはありますが、斧は使いません。

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こんな死に方はしません。

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こんなラストでもありません。

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