1987年発表

世界幻想文学大賞受賞

文庫1冊、474ページ

読んだ期間:3.5日




[あらすじ]

ジェフ・ウィンストンはニューヨークの弱小ラジオ局のニュース・キャスターを勤める43歳の中年男性。

それほど裕福でもない彼の結婚生活は、中年夫婦にありがちな倦怠感とすれ違いにより漠然とした危機感を孕んでいた。

そんな時、妻からの電話に出ている時、急激に胸の痛みに襲われ意識を失う。

そして目覚めた時、そこは見慣れた職場でも家でもなく、懐かしい大学の寮の一室。

さらに鏡に映る自らの姿は18歳の大学1年生の頃の姿だった。

1988年の43歳の時から25年遡った1963年の18歳に戻ったジェフは、それまでの記憶を元にギャンブルと投資で大きな財産と愛すべき家族を得るが、1988年43歳になると再び心臓発作を起こし死亡。

気が付くと再び、18歳の頃に逆戻りしていた。

こんな人生のリプレイが続く中、一つの事実に気づく。

逆戻りする年代がどんどん短くなっていく事に…




「人生やりなおしたいなぁ」というのは誰でも一度は思うことでしょう。

わたしも○十年ほど遡ってやり直したいと何度思ったことか…

本書はその夢をかなえた男の話、では無く、その罠にはまった男の話。

やり直しが何度も続いてしまうという、ある意味地獄のようなループにはまり込んでしまった男の話です。

例えばわたしなら、1回目は記憶を頼りにギャンブルや投資で一大財産を築く。

2回目は、がっかりしながらももう一回同じことを試して見る。

3回目は、正直ってもういいやと自堕落な生活。

4回目は、いい加減なんとかならないものかと色々あがいてみる。

5回目は、4回目の記憶を引きずりながらさらにそれを推し進める。

6回目は、さすがに諦めて泰然自若とした余生に終始する。

7回目は、どうでしょうか?自殺する…?




ジェフは自殺をちょっとは考えますが、実行はしません。

そう言う意味では前向きな人間といえます。

個人的には自殺をしたらどうなるのかが気になります。

ループの輪が崩れて人生が終わるのか?

死ぬ時期が早まっただけでまた18歳からやり直すのか?

自殺自体が何らかの作用で阻止されるのか?

このあたりは作者は触れてません。

あえてそうしてるんだろうと思います。




ジェフは現状を認識しながら何とかこのループを抜けられないかを模索します。

人生のやりなおしを計ったり、協力者を探したり。

そんな中、一人の女性と知り合います。

彼女は彼の状況を理解できる人間です。

なぜなら彼女もリプレイヤーだからです。

繰り返されるリプレイの中で彼らは必死にあがき、ループからの脱出を図ろうとしますが、

徐々にサイクルが短くなり、最終的には…




このあたりの短くなるサイクルの緊張感が中々見事で、次はどうなるのかが読みたくなってたまらなくなる。

著者のクセなのか、その時代の流れなのか、ラブシーンがやたらと出てくるのがちょっと邪魔でしたが、それほど期待はしてなかった作品としては面白かった。

最後、どうなるのかをワクワクして読みました。

まだ読んでない古典手前のSF小説は結構あるので、ちゃんと読まないといけないと実感しました。




左が43歳のジェフ、右が18歳のジェフ(多分)。

43歳の方は何となくカーク船長みたいな。

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