1996年に発表された、カナダのオーロラ賞受賞作品。
時は2094年。
人間とイルカ、異星人のウォルダフード族とイブ族を乗せたスタープレックス号がショートカットと名づけられた宇宙のどこでもドアを使ってまだ見ぬ知的生命体とのコンタクトを求めて冒険する物語。
ソウヤー流のスター・トレックと言ってもいい作品。
スタープレックス号とは、宇宙ゴマのような形状をした直径290mの巨大宇宙船。
乗組員を率いる船長は人間のキース・ランシング。
ウォルダフード族とは6本足でブタのような形状をした論争好きの短命な異星人。
イブ族とは7つの個別に生きるパーツの融合体で乳母車(?)の様な形状をした、論理派で長命な異星人。
そしてイルカは地球のイルカ。この時点で人類はイルカとの有効なコミュニケーションを可能にしているという設定。
この4種族がショーットカットにより出会う事で惑星連邦が生まれ、そして1000名の乗組員を擁して宇宙への冒険の旅をするのがスタープレックス号です。
本書は450ページ程の紙数ですが、その中で色々な冒険と発見をします。
その代表としては、
・ショートカットの正体
・ダークマターの解明
・惑星サイズの知的生命体とのコンタクト
・ショートカットから送り出される恒星群の理由
・不死への挑戦(ヘイフリック限界の打破)
・100億光年への旅
・渦状星雲がなぜ大量に発生しているかの理由
・星間戦争
・人間愛
などなど…
実に濃い内容です。
これらについて全て答えを出しているというのが凄い(これ以外にもありますし)
毎回、ソウヤーには驚かされます。
文章もうまく(翻訳者の力量もあるでしょうが)、ショートカットから恒星が出てくるシーンや星間戦争などスピード感あふれる筆致で読んでるこっちも興に乗ってズンズンストーリーに入り込みワクワクさせられます。
そもそも、一見バラバラなこれらの事柄が一つにまとまって来るのが凄い。
また、ウォルダフード族やイヴ族の生態なども非常に興味深く、良く考えられています。
地球からはイルカがもうひとつの知的生命体として冒険に参加しますが、
ウォルダフード族から「人間に虐げられて来たんだろう。何とも思わないのか」と問われた時の回答がふるってます。
「そもそも人間に知性があるなんて思わなかったんだよ」
目からウロコが落ちました(^^)
こういうウィットの利いたセリフが出てくるのもソウヤーの特徴の一つでしょうか。
船長のキースが20年連れ添った妻で科学者のリサとの結婚生活と自身の老いに悩み、
若い搭乗員のリアンに惹かれると言った人間っぽいエピソードが実は重要なファクターになっているとか、
意外性もあり、大変楽しめました。
この後は「フレームシフト」「フラッシュフォワード」と再び連続でソウヤーを読みます。
3~4月はソウヤー祭りです(^^)
