2007年発表作。

 



ドッグ・レスキューを主催するエイミーは、恋人で建築家のブライアンと共にある一家を訪れる。

そこでは酒に酔った主人が家族と飼い犬のゴールデン・レトリーバーのニッキーを迫害していた。

ニッキーとその家族を助け出したエイミーとブライアンだが、エイミーはニッキーにただの犬ではない不思議な何かを感じ、自宅に引き取る事にする。

その頃、ある男女が手近な家に火を放ち、家人が焼け死ぬのを鑑賞していた。

その男女とはムーンガールと彼女を信奉するハロー。

破滅的な性格のムーンガールは退屈しのぎに放火をし、それをとめる事も無く手を貸すハロー。

一見、全く接点の無い二組の男女が、それからの一日の中で想像を絶する奇妙な邂逅を見せる…

 



本書のに出てくる人間には、これ以外にも殺し屋のビリーなどかなりの曲者が多く、人間劇としても良く出来ています。

ムーンガールとハローの一味は同じクーンツの「オッド・トーマスの受難」に出てくるダチュラたちと酷似している気がしますが、彼らとエイミー&ブライアンの関係には驚かされるカラクリが…

 



また、帯にもあるようにクーンツの犬愛にあふれる小説ともなっており、神秘性のあるニッキーはともかく、

他の普通の犬達の普段の生活ぶりや、迫害を受け心と体に傷を負ってシェルターに入ってきた犬達の様子など、

犬好きの人にはたまらない小説になっています。

出てくる犬がレトリーバーばかりなのは、クーンツが飼ったのがゴールデン・レトリーバーなので、まぁしょうがないでしょう。

しかも、本書出版年は彼の愛犬の没年ともなっており、何か因縁のようなものも感じます。

 



本書に登場するのは、金儲け主義のブリーダーに無理な繁殖をさせられたり、飼い主から虐待を受けていたりと、

あまり恵まれてはいない生活をして来た犬達ですが、こういう事はどこの国でもある事で、こういった話をニュースで聞くと、犬を飼っているわたしとしては腹立たしい限りです。

せめて我が家の愛犬には楽しい一生を送って欲しいと願いながら、今日も寝てるところをつついて起こして「うるさいなぁ」という目で見られたりして(^^;

 



とにかく本書は早く続きを読みたいと思わせる作品でした。

普段、通勤途中の移動中の、一日約2時間しか本を読まないわたしでも、500ページを3日で読みきるほどのスピードで読めました。普段はこれほど早くは読めないんですが。

何にしても犬好きでサスペンス好きな人にはお勧め。
 

 



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