1995年発表のネヴュラ賞受賞作品。

 



医療機器の開発を行っているピーター・ホブスンは、ある画期的な発明を果たす。

スーパー脳波計と名づけられたその機械は、脳内のニューロンの活動を非常に詳細に検知する事が可能だった。

これにより、医学生時代の疑問に一つの答えを得られるはずだった。

その疑問とは、人間の死の認定。

彼は、死に直面したある女性の協力を得て、脳波検知実験を行う。

そして驚くべき現象を目の当たりにする。

死の直前に脳内を駆け巡る不思議な波動を検知し、死の直後、それは頭から出て行くような挙動を表した。

他の被験者からも同様の波動を検知したピーターはそれを「魂波(ソウルウェーヴ)」と名づけ、世界に公表する。

さらに彼は、死後の世界への探求のため、親友でありコンピュータのエキスパートであるサカール・ムハメドの協力を得て、脳内スキャンを実施し、自信のコピーをAI内に作り出す。

さらにそれを2つコピーし、一つは肉体的要素を取り去り死後の魂をシミュレートした”スピリット”、もう一つは死の概念を払拭し不死をシミュレートした”アンブロトス”、最後の手を加えていないコピーを”コントロール”と名づけ実験を開始した。

しかし、当時のピーターは問題を抱えていた。

愛する妻であるキャシーが浮気をしていたと告発。

浮気相手で妻が勤める会社の同僚のハンスと、子供に対して常に無関心でい続けた父親のロッド。

この二人に対する激しい憤りと殺意を抱いたまま、脳内スキャンを実行していた。

その後、ハンスが殺害され、続いてロッドも不審な死を迎えるに至り、ピーターはそれを画策したのは自分のコピーのどれかだと気づく。

事件の首謀者はどのコピーか?

さらには魂とは何なのか?

 



といった内容。

 



文章の構成にも気を使って書かれており、読み始めは何を意図しているのか分からない仕掛けがあったり。

巻末の解説にもあるとおり、”魂”の発見から死後の世界の探求とストレートに行かずに、殺人事件の犯人探しに様相を変えるなど、トリッキーな変化をもたせながらも、”スピリット”、”アンブロトス”という死後と不死の代表を用いてその世界観を語ってみたりと、中々考えさせられる作品。

ピーターのコピーであるAIのシムたちの描き方などは、サイバーパンク物に詳しい人にはあっさりしすぎの感があるかもしれませんし、死後の世界や魂についての哲学的考察を探求したい人には物足りないかもしれませんが、あまり深く掘り下げすぎると読者が付いて行けなくなりそうでもあり、そのあたりは適度な範囲で収めたという印象。

コンピュータやネットワークの知識がそれほど詳しくない本体が、AI化されてからあっと言うまにプロフェショナルに変貌するのはちょっと安易かという気もしますが、500ページに満たない紙数を考えれば良くまとめてあると思います。

最後の楽観的なエンディング(こう書くとネタバレ丸出しな感じですが…)はソウヤーらしいと言ったところ。

 



これで今年に入ってソウヤー作品は4作目。

さらに後、4作がこの後、控えてます。

結構、はまってる(^^)



 



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