1992年発表のソウヤーの第2長編。
舞台は恐竜が進化したある惑星。
中世ヨーロッパあたりの文化を営むキンタグリオ族(=恐竜)の見習い占星師、アフサンは師匠で偏屈な宮廷占星師タク=サリードの元、厳しい修行にいそしむ毎日。
アフサンはそれまでの見習いとはちょっと違っており、本に書かれている事をそのまま信じず、自分で確認しなければ納得しない、非常に好奇心や想像力が旺盛で聡明な卵ぼうず(=若造、小僧という意味)だった。
ある時、遠くのものを細かく見ることの出来る遠見鏡を得て、星や太陽や地平線を観察していてある重大な事実に気づく。
しかし、それはこれまでの宗教・文化を否定する事になるが…
ここに出てくるキンタグリオ族はオルニトレステスのような小型恐竜が原型になってるのかな?
(表紙イラストとはちょっと違う感じですが)
他にもブロントサウルスやトリケラトプスを髣髴とさせる恐竜が出てきますが、こちらは完全に知性の無い動物の扱い。
狩りの対象になったり乗り物になったり。
面白いのはこのキンタグリオ族の生理や習俗。
生来備わっている縄張りを意識した挨拶や、狩りの習慣など、かなり細かく設定されていて、キンタグリオ族がいきいきと描かれています。
こういう人間以外の世界を描く物語だと、それがどういうものなのか、そこで生きるものはどういった生き物かを理解するのに時間がかかる事がありますが、本書ではすんなりと頭に入って来ます。
この辺りの描き方の巧さは、著者のソウヤーが恐竜好きであるからかも。
著者自信が楽しく描いているんだろうという事が伝わって来ます。
ベースはファンタジーですので、SF色は少しばかり薄いですが、中盤あたりでアフサンが天文の謎を解いていくシーンでは純然たるSFが展開されます。
アフサンはコペルニクスとケプラーを足して2で割ったような実績を、ちょっとあっさりと上げてしまいますが、その後の急激なスペクタキャラーな展開には思わずのめりこみます。
本書3/4までのどちらかというとゆったりとした展開からのシフトチェンジは唐突な感もありますが、インパクトとしては見事。
何にしても面白かったのは事実。
前回読んだ「さよならダイノサウルス」よりは個人的には好きです。
本書は3部作で既に完結していますが、邦訳は本書のみ。
残念です。何とかならないもんでしょうか?
蛇足ですが、今日、ニュースサイトを見ていたら、”恐竜絶滅の謎、解明!”という記事が!
どうやら、メキシコのユカタン半島に落ちた小惑星(チチュルブ・クレーターというクレーターになってる)による環境変化が原因という事に落ち着きそうです。
”直径10~15キロの小惑星、衝突速度は秒速約20キロ、衝突時のエネルギーは広島型原爆の約10億倍、衝突地点付近の地震の規模はマグニチュード11以上、津波は高さ約300メートル”だそうです。
うーむ、何とも恐ろしい…想像を絶する大災害だなぁ…
色々な説があってこそ夢があるとも思いますが、色々解明していくのも科学。
また、新たな説も出てくるかもしれないし。
世界は、宇宙は、謎に満ちてますしね!
真ん中がアフサン、右上の本を持ってるのが師匠のサリード、左下の肉食べてるのが後の皇帝で友人のダイボ(多分)