このふざけたタイトルの小説は、今から200年ほど前に出版されたジェイン・オースティン「高慢と偏見」という傑作小説にセス・グレアム=スミスがゾンビの要素で味付けしたという、聞くからにふざけた小説です。
舞台は19世紀のイギリス。田舎に住むベネット家の5人姉妹の次女エリザベスと資産家のダーシーとの、身分を超えた恋愛を描いた物語。
が、「高慢と偏見」の部分。
ここにゾンビが入って来ます。
そこはゾンビがいるのは当たり前の世界。
ゾンビとの遭遇は日常的で、今で言うと交通事故のようなもの。
あるものは餌食にされ命を落とし、あるものはこれを撃退し二度目の死を与えます。
ベネット姉妹は父の方針で全員が戦闘訓練を受けたゾンビハンター。
わざわざ中国の少林寺まで出向いて少林寺拳法を習得し、さらに刀や銃器の扱いにも長けています。
その中でも最強の使い手が次女のエリザベス。
恋愛よりも戦士としての道を歩む事に決めていたエリザベスの前に資産家のダーシーが現れます。
当初、とっつきにくくぶっきらぼうで高慢な態度のダーシーに嫌悪感を抱いていたエリザベス。
ところが、色々な出来事を経るに従いその偏見が払拭され、恋愛へと転化していくわけです。
が、その出来事の中には、ゾンビ病に罹患して徐々にゾンビ化していく親友の女性がいたり、ニンジャとの戦闘があったりと、普通ありえない事が当たり前のように起こります。
物腰や話し方は上品な軟らかさながらその内容はめちゃくちゃに血なまぐさいエリザベスには笑いが禁じえません(^o^)
ヒダヒダモコモコのロングスカートの中には男性のゾンビの頭蓋骨を一撃で粉砕する強靭な足があったりするわけです。
訳者あとがきによれば、「高慢と偏見」の部分が80%以上入ってるそうなので、大半は19世紀の恋愛小説です。
この手の小説を全く読まないわたしとしては何にも興味が沸かないわけで、当然元ネタの「高慢と偏見」は読んでおらず、元を知ってたらどんな感じなのかという事までは分かりません。
「高慢と偏見」の方は夏目漱石が絶賛したほどだそうですが、本書はわずかなゾンビテイストによりゲテモノ小説と化していると言ってしまってもいいのでは?
(とてもうまいとは思えない挿絵もゲテモノ度をUPさせてます)
とは言え、全米でミリオンセラーになってしまった本書は、ナタリー・ポートマンが映画化権を取得し2011年公開予定だそうです。
何だか今からラジー賞の作品賞と主演女優賞のノミネートは確実な様子。
ただ、笑える映画にはなりそう。
(エリザベス役のポートマン(人間)が、倒したニンジャ(人間)の体から心臓を素手で抜き取りかじりつく姿を想像すると今から身震いするほど笑えそう(^o^))
さらに、二匹目のドジョウをねらって、やはりジェイン・オースティンの「分別と多感」に海の怪物を付け合せた作品が既に刊行済みな上、本書の前編に当たる作品も刊行予定。
また、セス・グレアム=スミスはリンカーンがヴァンパイア・ハンターとして活躍する作品も発表間近との事。
この手のある意味反則な手法は2回目以降はよっぽど面白くないと失敗すると思うんだけど、どうなんでしょうか?
ちなみに500ページくらいありますので、それでもいいからちょっと変わったものが読みたいという人はどうぞ。