1980年に発表された著者の処女作。

年代的には古典の域に入りかけている、良く見かけるタイトルですが、なぜか今までスルーしてました。

本書を読み終わって最初に思ったのが正にそれ。「なぜ今までスルーしてたのか?」でした。

 



内容としては、人類と異星人との邂逅になりますが、その相手とその住む星の設定が飛びぬけて凄い。

彼らの住む星は、直径20kmながら太陽の半分ほどの質量を持ち、670億Gの重力と東西南北4極の極点から1兆ガウスの磁場が取り巻く温度8000度の中性子星。

そこに住むチーラと呼ばれる生命体は半径2.5mmで70kgの体重のアメーバ状の知的生命体。

かれらの生活スピードは人類の1秒に対して100万倍のスピードであり、つまり、人の1秒の間に100万秒=11.5日進むという設定。

正に目眩を感じるほどの強力な設定。

 



チーラの性格設定が妙に人間っぽかったりするので、その姿を思い浮かべるとものすご~く違和感を感じますが、それも慣れてくると逆に面白く感じます。

 



登場当初は数の概念が確立しておらず「1、2、3、たくさん」だったのが数とは何かのひらめきを得てからは、

道具の発明、社会体制の確立と進んで行き、最終的には人類を超えるところまで到達する様はこれからの人類の希望的未来を暗示しているようです。

名前の付け方がネイティブ・アメリカンっぽい(ノース=ウィンドとかスウィフト=キラーとか)のも親しみやすい。

そして読み終わると、ほのぼのとした暖かさを感じる、希少なハードSF小説です。

 



著者のフォワードは重力理論を専門とする科学者で、本書のような設定は正にお手の物なんでしょう。

正直言って、理屈が分かりにくいところはありますが、巻末に用意されている小説内報告の「専門的補遺」に解説もありますので、多少救われます。

本書はある程度予備知識があった方が分かりやすいと思うので、こちらから先に読むのも一つの手かも。

続編もあるようですが、残念ながら絶版のようで、入手するには古書店を探さなければならない。

 



それにしてもまだまだ読み損ねている小説がたくさんありそうだなぁ。

時間がいくらあっても足りない…



 

表紙の丸いのは人類の観測宇宙船「ドラゴン・スレイヤー号」

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