あさりよしとお「宇宙家族カールビンソン」の原住民で、額に川の字のある「つりのコーちゃん」の元ネタとして有名な(?)、日本特撮界の重鎮、川北紘一氏の半生を綴った一代記。


古くは1962年の「妖星ゴラス」から平成ゴジラシリーズ、2007年の「Kawaii! JeNny」まで、
45年にわたり携わった色々な特撮作品の裏話を、口語筆記的な朴訥とした文体で楽しく読めます。


本書で特に共感できたのは「アナログ的手法の良さの見直し」ですね。
最近のTVや映画はCG全盛で、計算された映像効果が事前の設計通りに再現できるようになって、
かつては映像化不可能と思われていたシーンもほぼ問題なく実現できるようになりました。
それは、確かにすばらしいし、観ていても驚きや感動は味わえるんですが、どこかで手作り感が欲しいなぁという、ちょっとした物足りなさ、深みや重みの少なさを感じます。


川北氏が言う「CGは頭で考えた事が出来るが、考える事以上の事は出来ない。」とは正に正鵠を射ています。
かつての手作り作業では、たとえば、爆発時の火炎の大きさや焔の姿、ほこりのたち方、ミニチュアの壊れ具合など、人間が計算できない何かが生まれる可能性がありました。


失敗する事も多いでしょうが、思わぬ成功を収める可能性もある。
こういった意外性はCGでは中々出せないんでは無いか。
ちょっと考えが古いのかなぁとか思いながら、うなずきながら読んでました。


ちなみにわたしは平成ゴジラと平成ガメラとを比べた場合、圧倒的にガメラ派です。
ゴジラは子供向け、ガメラは大人向けと単純にくくるわけではないですが、
どうしてもストーリーの整合性やSF考証の妥当性、配役、セリフなどゴジラは「?」が浮かぶ事が多くて…
ただ、そうは言っても、広大なセットでの怪獣バトルシーンはガメラには無い迫力がありました。
本書を読んで、その裏側を知ると、またゴジラを観たくなって来ました。



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