早川書房 「ミステリが読みたい! 2010年版」の2009年ミステリ・ベスト10海外部門第2位。
(ドン・ウィンズロウ「犬の力」は第5位。う~む)
前作「チャイルド44」から3年後。
主人公レオは念願のモスクワ殺人課を創設し、相棒ネステロフと共に職務に励む毎日。
その頃、フルシチョフによる激烈なスターリン批判は、かつてスターリンに仕えていた者たちすらも否定さる事になる。
そんな中、レオが国家保安省に勤めはじめた頃の作戦に関わった者が次々と自殺を図る。
彼らによって逮捕され、拷問を受け、投獄された者たちが、スターリン批判のあおりを受けて釈放され、復讐を始めた。
その手はレオにも及び始める…
また、かつて自分のミスで、目の前で両親を殺された姉妹ゾーイとエレナを養子にしていたがレオだが、幼かったエレナはともかく、当時11歳で何が起こったかをはっきり認識していたゾーイはレオに激しい憎悪を抱き、ひいてはそれが殺意となり、夜中にレオの喉元にナイフをかざす事までしていた。
こういった家族関係の複雑さに加え、妻のライーサとの微妙な関係、自身に降りかかる苦難が家族にまで飛び火し、またもやレオは苦難の道を歩みます。
ただ、前作があまりにも面白かったので、ハードルが極端に上がってしまい、本作はちょっとこじんまりした印象。
驚きの部分もあるにはありますが、陰湿だったり想定できるものだったりで、やはりそれほど驚かない。
次々に主人公に降りかかる苦難と次々に主人公に降り注ぐ幸運(結果的に何とか相殺)とか、
友人や家族が蒙る不幸とかは、こういった冒険ミステリーによくある展開だったりするし。
そこを立て続けに、巧いこと読ませる事には成功してはいますが、どうしてももっと驚かせて欲しい。
いよいよ次作で本シリーズは完結の予定なので、ぜひともがんばっていただきたい。
前作が「44」、本作が「57」なら次作は「70」?