かつて読んだ本シリーズ第3弾。
1982年作品。1984年週刊文春ミステリーベスト10第1位となった法廷劇小説。
娘を強姦され殺された父親がその犯人に復讐するために周到に凶器を準備し、明確な殺意を持って犯人を射殺。
自分の行動と罪を認め、罰に服する事を求めて自首した父親。
圧倒的に不利な状況で弁護を引き受けた若き弁護士はこの難局にどう立ち向かうのか?
という内容。
この父親は、それまで駐車違反すら犯したこの無い、誠実・勤勉で慎ましやかな人生を送ってきた善良な市民です。
それがこのような悲劇に見舞われた上に、法の不備のため、証拠と自白があるにも関わらず犯人は釈放されてしまいます。
問題の法の不備とは、次の2つ。
「不当な証拠の取得」のため証拠は無効、
「保釈中の場合、弁護士不在での自白認められない」ため自白も無効。
そもそもこの犯人が保釈中となっている原因の犯罪が婦女暴行。
娘を失い、その犯人が釈放されるという理不尽な状況を目の当たりにして心労のため父親の妻は心労から亡くなってしまいます。
誰もが同情を禁じえないこの父親ではあっても、法に照らし合わせれば有罪とするしかない事に苦悩する陪審員たち。
もちろん裁判官も好き好んで罰を与えたいわけでもなく、法の番人としては有罪しかありえない。
こんな状況で弁護を引き受けた弁護士は、失敗を繰り返しながら起死回生の手を模索します。
こういう法廷劇小説は初読ですが、非常に面白かった。
人間はミスを犯すもの。その人間が作った法律だから抜け穴があっても当たり前とは思っても、
こんなことが現実に起こったら、誰もがこの父親のようになってしまう可能性があり、
もし現実なら父親が有罪になり刑に服す事になるんでしょうか?
それでは報われないですが、せめてフィクションの世界では父親の無念が晴らせる世界であって欲しい。
そんな気持ちを代弁するような小説です。