25年前に書かれた米ソ核戦争に関するシミュレーションノベル。



 

1988年10月。

 

アメリカは超高性能の本土防空衛星を打ち上げる。

 

アメリカとしてはこれにより本土防衛を確実にし、自国の核兵器の削減を宣言する予定であったが、

 

疑心暗鬼の固まりのソ連に意図が通じるわけもなく、危機感を極限にまで高めたソ連はついに先制核攻撃を実行にうつす。

 

不意をつかれたアメリカは何とかソ連首相に連絡を取ろうとするも核による電磁パルスにより通信網はダウンし、不可能となり、その上、大統領の乗る国家緊急事態空中指揮機も操縦不能に陥り、墜落の瞬間、ついに大統領も反撃の核ボタンを押す。

 

わずか20分ほどの核のやり取りの結果、米本土は中東部を中心に壊滅的被害を蒙る。

 

また核爆発による電磁パルスにより、各種電子機器の大半が機能不全に陥り、通信インフラ、空陸の交通網、電気・水道などの生活インフラなども大打撃を受ける。

 

食糧難による飢餓も発生し弱った米国民にインフルエンザの大流行、不特定硬化症という新病が追い討ちをかけ、「戦争の日(ウォー・デイ)」から5年で6000万人の人口を失う事態に至る…



 

著者のストリーバーとクネトカは、自身がこのような惨禍に巻き込まれた当事者として、「戦争の日(ウォー・デイ)」から5年後のアメリカを旅しながら、この戦争の詳細を調査していく。



 

1人称で語られる本書は、非常に淡々とした語り口と無味乾燥な政府文書の記述などにより、逆に非常にリアルなものとなっており、まるでノンフィクションを読んでいるような錯覚に陥ります。

 

比較的被害の少なかった西部地方では流入する他州の難民を不法入州者として厳しく取り締まったり、

 

メキシコに隣接する地域では、ラテン・アメリカ系住民が非ラテン・アメリカ系住民を追い出し独立宣言する、

 

といった状況が旅の途中で出会う人々へのインタビューで明らかになっていきます。



 

一方の当事者であるソ連についてははっきりした記述はありません。

 

ただ、アメリカ同様、政府が瓦解状態なのは、東欧諸国がソ連邦構成国への侵攻を図るなどの記述で容易に想像できます。

 

アメリカ、ソ連という超大国の崩壊は世界中に被害を及ぼしますが、イギリスや日本など比較的被害の少ない国家がアメリカ復興に力を貸します。(ちょっと日本の書き方が微妙ですが…)



 

80年代半ばといえばまだ米ソ冷戦真っ只中で、実際にこのような全面核戦争が起こるのではと危惧されていた時代。

 

小説でも東西陣営の戦争(第三次世界大戦)を描いたものが大量に出版されていました。

 

本書はその中では異質な存在で、そのせいもあってか、今まで読まずに寝かせていましたが、

 

そのおかげか見事に熟成され、大変興味深く読むことが出来ました。



 

著者のW.ストリーバーは「ウルフェン」や「ザ・ハンガー」を書いた人。後にUFO研究家に転身してしまい「コミュニオン」など書かれたそうです。

 

もう一人のJ.W.クネトカは幼馴染みで、オッペンハイマー(マンハッタン計画の中心人物で「原爆の父」)の伝記などを書いてるそうです。



 

さすがに古い本なので、すでに絶版。手に入れるには古書店へ行くしかありません。



 



内容が内容なだけに硬い文章になりました(^^;

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